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2021.09.07 08:00

【課金ルール修正】より自由な事業環境を

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米アップルは、iPhone(アイフォーン)のアプリ開発業者の一部が同社に手数料を支払わないで利用者に課金しやすくするよう、ルールを修正すると発表した。
 アプリ内の課金で、アップルは最大30%という高率の手数料を取っている。「不当に高すぎる」との批判は根強く、「アップル税」とやゆする声もあるほどだ。
 従来、同社のシステムによる決済を義務付けてきたが、書籍や音楽、動画を配信する「リーダーアプリ」を対象に、2022年から世界全体で外部にある決済サイトへの誘導を容認する。より多くの企業が自由な事業展開を図れるよう、さらにルールの見直しを進めてほしい。
 一般のアイフォーン利用者は通常、さまざまなサービスのアプリをアップルの「App Store(アップストア)」からダウンロードする。自社で開発したアプリも、月額利用料や有料コンテンツに関する決済はアップルのシステムで行う仕組みで、アプリ企業が手数料の支払いを回避する手法を認めてこなかった。
 アップル側は自社の課金システムの義務付けを、決済の安全性や信頼性を維持するためとしてきた。ただ高額な手数料は、利用者にとってはサービス価格を押し上げ、アプリ企業には収益を圧迫する要因にほかならない。
 高いシェアを背景とした優位な立場で、弱いアプリ企業の活動を制限している。そうした見方から各国の規制当局は厳しい目を向けており、欧米では当局やアプリ企業との間で訴訟に発展している。
 今回のルール修正も、独占禁止法が禁じる私的独占、拘束条件付き取引にあたるとの疑いで日本の公正取引委員会が審査していたことがきっかけだった。
 巨大企業が一定の譲歩を強いられた格好だ。日本市場の重要性もあろうが、世界的に狭まっている包囲網を意識した対応と言えよう。
 公取委は、課金ルールの修正によって独禁法上の懸念は解消されるとして審査を終了する。だが、今回の見直しは、手数料に加えて著作権料も負担となっているメディア関連に対象が限定され、収益の主力とみられるゲームなどの分野では同じ構図の問題が残った。引き続き注意深く検証していく必要がある。
 アップルのほか、グーグル、フェイスブック、アマゾン・コムを加えた「GAFA」と呼ばれる巨大IT企業は、革新的な製品やインターネットサービスを創出して生活を大きく変えた。その一方で、既存社会と至る所で摩擦を起こしている。
 例えば納税だ。現行のルールでは国内に拠点がなければ原則的に課税されない。巨大IT企業はそうした「抜け道」を利用する形で各国で大きな利益を上げつつ、巧みに納税を免れてきた。
 むろん、各国の法整備が後追いになっている面はあるにせよ、企業としての姿勢が問われていよう。世界的な企業にはその存在感にふさわしい社会への貢献が求められる。

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