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2021.09.05 08:00

【食料自給率37%】最低水準の危機感ばねに

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2020年度のカロリーベースの食料自給率は37%だった。前年度から1ポイント低下し、過去最低の水準となっている。
 昨年決定した農業政策の中長期的な指針である「食料・農業・農村基本計画」は、30年度の自給率の目標を45%とする。近年は40%を割り込んで推移する状況にあり、達成を楽観できる状況ではない。
 国産品の消費拡大や、生産基盤の強化で農業経営を底上げすることが重要だ。今回、生産額ベースでの自給率はわずかに上昇したものの、劇的な向上は期待しにくい。堅実な取り組みを重ねていくしかない。
 20年度はコメの需要減少、小麦の生産落ち込みに加え、新型コロナウイルス禍による外食需要の減少が響いた。家庭食は増加したが、減少を補えなかったと分析される。
 ただ、自給率は食生活の洋風化やコメ離れを背景に長期的に低下傾向にある。1965年度は73%だったが、70年代に60%を割り込み、90年ごろには40%台に入った。2000年ごろからは40%あたりが続き、10年からは30%台後半になっている。
 37%はこれまでに2度ある。1993年度はコメの記録的な凶作を受けて、当時の40%台半ば水準から一気に落ち込んだ。このときは特殊性が際立つが、次回の2018年度は、今回にもつながる近年の傾向の中に位置付けられる。
 自給率目標もこうした動きに応じて見直しが重ねられてきた。その際、現実とはかけ離れた目標値の引き上げや目標年度の先送りも行われてきた。食料不足に備える危機管理の指標だけに高い数値に留め置きたいという思惑からだろうが、期待値の側面を強く感じさせる。非現実的な目標設定に批判も少なくない。
 何より、自給率の低下が止まらないことは対策の効果の乏しさを示す。産地育成や加工・流通施設の整備など、農業の活力と食料供給力を高める実効性ある対策を進める必要がある。
 農業従事者は高齢化と減少が進んでいる。20年の農業従事者は136万人となり、5年で40万人近く減少した。65歳以上が占める割合は7割に迫る。担い手不足は深刻さを増している。団体経営体が増え、農地の集約化も進んではいるが、後継者の確保は課題のままだ。
 高知もほぼ同じ傾向にある。農地の制約もあり条件はそれぞれ異なるが、新規就業者の確保と生産性の向上への取り組みを続けることは地域の維持にも欠かせない。
 近年は気候変動への警戒も強めないといけない。温暖化が進行すると熱波や大雨、干ばつが増大し、農業生産への影響が危惧される。被害を軽減する取り組みが怠れない。国内にとどまらず、他国の生産低下や貿易が滞ることもあり得る。危機意識を持って想定される事態と向き合うことが打撃の軽減につながる。
 農林水産品・食品の輸出額は初の1兆円超えが視野に入るなど新たな動きも見られる。多面的な施策で農家の所得向上を図りたい。

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