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2021.08.31 08:00

【アフガン緊迫】泥沼化を避ける努力を

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米軍の撤退期限の31日を迎えアフガニスタン情勢が緊迫している。
 過激派組織「イスラム国」(IS)系の自爆テロに対し、米軍は報復の空爆作戦を行った。巻き添えとなった市民の犠牲が伝えられる。
 首都カブールの空港周辺はテロの脅威が高まり、国外退避は難航しているようだ。市民らの被害を拡大することがあってはならない。
 イスラム主義組織タリバンは駐留米軍の撤退完了を前に全土で猛攻を続け、想定をはるかに上回る早さで要衝を制圧した。15日にはカブールに侵攻し勝利宣言した。
 4月下旬に米軍が開始した撤退の拙速さが、民主政権の崩壊を招く結果となった。各国外交団や国際機関の脱出が相次いだ。
 出国を希望するアフガン人が殺到していた空港付近で起きた自爆テロで、米兵13人を含む180人以上が死亡した。犯行を認めたIS系勢力「ISホラサン州」は、政権を掌握したタリバンと敵対する。
 情勢はさらに複雑化した。米国は報復として無人機による空爆を実施し、継続すると宣言した。対テロ作戦は泥沼化の危機にある。
 日本政府は退避支援へ航空自衛隊機を派遣した。カブールから隣国パキスタンの首都イスラマバードへ、数百人規模の退避を想定したが、15人の輸送で事実上終了した。
 派遣は安全に実施することが法的要件となる。このため、安全確保が難しい空港まで退避者が来るように求めていたが、やはり困難で多くが到着できなかったという。
 政府は当初、外務省に対応させ、自衛隊は派遣しないとしていたが方針を転換した。決定の遅れが響き、有効な策を打ち出せなかった。一連の判断の検証が不可欠だ。大使館のアフガン人職員ら退避希望者の大半が残っているという。引き続き、あらゆる手段を探る必要がある。
 タリバン旧政権期は、国際テロ組織アルカイダを支援して国際社会から孤立した。イスラム教の厳格な適用を主張して女性の権利を抑圧するなど恐怖政治を敷いた。
 報道担当者は国内各派との融和を強調し、多様なアフガン人が参加する包括的なイスラム政権の樹立に意欲を示した。女性も政府の枠組みに参加するように促すと発表した。また敵対勢力や国軍を罪に問わない「恩赦」を与えると表明した。
 圧政逆戻りへの警戒を解くことで孤立を回避し、国際社会との関係を構築したい思惑もあるのだろう。しかし、新政権の具体像は明確ではなく、発言をそのまま受け止めることはできない。ISホラサン州の暴挙に内戦の懸念も高まる。
 旧政権の恐怖政治を知る市民の不信感が簡単に消えないことは、空港に出国希望者が押しかけて混乱する様子が明らかにしている。安全な国外退避を保証し、各国の対応に協力することが必要だ。
 日本はアフガンの復興プロセスに積極的に関与してきた。アフガンは20年間の国際支援を無駄にするようなことをしてはならない。

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