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2021.08.29 08:00

【子どもの自殺】安心できる居場所が必要

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 夏休みも最終盤になった。9月から多くの学校で2学期が始まるのを前にして、子どもが精神的に不安定になりやすい時期である。
 夏休み明けは、児童生徒の自殺が突出して多く起きることも知られている。周りの大人が子どもの異変に注意すべきタイミングだ。
 「学校に行きたくない」「しんどい」―。子どものそうした訴えに耳を傾け、不安な気持ちをしっかり受け止める必要がある。
 残念ながら、児童生徒の自殺は新型コロナウイルス禍の影響によって急増している。厚生労働省によると、昨年は前年より100人多い499人が亡くなり、統計のある1980年以降で最多となった。
 原因は多岐にわたるが、進路に関する悩み、学業不振、親子関係の不和などが多く挙げられている。
 児童生徒の自殺防止策を検討する文部科学省の有識者会議は、6月に示した提言案で、自殺急増の背景について、昨年の外出自粛や一斉休校などの影響を指摘している。
 それによれば、親子が家にいる時間が長くなり、ストレスが高まった場合がある。例えば、親の在宅勤務の邪魔にならないよう子どもが気を使い続けたり、経済的不安などが増した親から干渉や叱責(しっせき)を受ける機会が増えたりした。
 学校では、3密回避や行事の中止などで、友達や先生との交流が減り、悩みを相談しづらい状況になった。家庭でも学校でも「居場所がない」と感じてしまい、追い詰められる子どもが増えた可能性に言及している。
 今年も引き続きコロナ下にあり、子どもが苦しんでいる状況が懸念される。既に今年前半、児童生徒の自殺は昨年を上回るペースで起きている。子どもがストレスや悩みをため込まないよう、周りの大人が十分に注意することが欠かせない。
 特に女子高校生の自殺防止策が急がれる。昨年自殺した499人のうち140人を占め、前年比で60人も増えた。原因が「うつ病」というケースも増えている。治療につなげるため、家庭や学校は医療とも早めに連携することを考えたい。
 夏休み明けは、不登校も増えるタイミングである。
 不登校の増加についても、コロナ禍の影響が指摘されている。高知市の小中学校では昨年度、年間30日以上欠席した不登校の児童生徒数が前年度比で15%の大幅増となった。
 子どもが孤立感を深めることは、命を絶つという最悪の結果にもつながりかねない。
 安心できる居場所の確保が欠かせない。教室に入れない子どもに対応する学校内の特別教室など、受け入れ先の拡充を進めたい。
 子どもはストレスをうまく言葉にできず、抱え込んでしまいがちだ。行動や体調の変化でSOSを発することもある。専門家は、周りの大人が言葉に出して、心配していることを伝える重要性を強調している。
 小さなSOSも見逃さず、コロナ下で悩む子どもを支えたい。

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