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2021.08.20 08:00

【敦賀原発2号機】企業統治に信頼置けぬ

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 再稼働へなりふり構わぬ日本原子力発電の姿に、東京電力福島第1原発事故の教訓は見いだせない。
 電力大手各社が出資する原電が敦賀原発2号機(福井県)の審査資料を不適切に書き換えた問題で、原子力規制委員会は再稼働の前提となる審査の中断を決めた。
 規制委は昨年2月の問題発覚後にも審査を一時中断したが、書き換えの経緯を調査した規制委事務局が原電の業務管理に問題があるとする中間報告をまとめ、再度の中断に至った。原電に対する強い不信感の表れにほかなるまい。
 原発の審査は事業者の資料を基にした、いわば性善説に立っている。その大本となる資料の信頼性が疑われる事態は、審査の在り方そのものを揺るがす。審査中断は当然の判断と言えよう。
 原発専業の卸電力会社である原電は、東海第2原発(茨城県)と敦賀原発2号機の再稼働を目指す。東海第2は最長20年の運転延長が認可されたが、地元合意が難航している。敦賀2号機の再稼働は、企業の存続に関わる問題だろう。
 たとえそうであっても、原発にとって安全性以上に重要なテーマはない。審査資料の不適切な書き換えは当然看過できない。
 規制委の有識者調査団は、敦賀2号機の原子炉建屋直下に活断層がある可能性を指摘し、2015年に評価を確定させた。新規制基準は活断層の上に重要施設を建てることを禁じている。廃炉が濃厚となったが、原電は再稼働に向けた審査を申請して、断層の活動性を否定しようとしている。
 問題はその審査過程で判明した。断層の活動性でポイントとなる敷地の掘削調査に関しては、無断で計25カ所を書き換えている。以前に提出された資料では、一般的に地層が活動した可能性が疑われる記述だったが、活動性を否定する正反対の内容に変わっていた。
 原電は、より信頼性の高い調査に上書きしたためで「恣意(しい)的ではなく、技術的に妥当な評価だ」と改ざんを否定する。だが、額面通り受け取るわけにはいかないだろう。
 原電側には極めて有利な記述に変わっており、専門家は「都合の良いデータのみを提示するのは科学的な姿勢とは言えない」と指摘する。
 問題は敦賀原発2号機にとどまるまい。不適切な書き換えをした原電の担当グループは、東海第2の審査資料も作成していたという。規制委は改めて、資料の内容を検証すべきではないか。
 政府が改定を進めるエネルギー基本計画は、原発の30年度の電源構成目標を20~22%程度とする。19年度の発電実績約6%からすれば「再稼働ありき」の方向性は明らかだ。
 しかし、原電のほか、原発事故の当事者である東電も柏崎刈羽原発で核物質防護の不備が発覚し、事実上の運転禁止命令を受けている。企業統治や原発の安全性が問われる問題をなおざりにしたまま、再稼働を進めるわけにはいかない。

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