2021.08.14 08:00

【園児熱中症死】悲劇防止へ基本徹底を

 防げる事故、助かるはずの命だったことは明らかだろう。
 福岡県中間市の保育園に通う5歳の園児が送迎バスの中に約9時間にわたって閉じ込められ、熱中症で死亡していた。
 熱中症への警戒が呼びかけられる中、安全管理が第一の保育園で発生しただけに衝撃は大きい。出欠の確認や点呼といった基本を怠ったミスが連鎖し、重大な事態につながったとみられる。
 業務上過失致死容疑で警察が捜査しているほか、県と市が児童福祉法などに基づく特別監査を行っているが、明らかになった運営実態には驚きを隠せない。
 送迎バスには1歳児を含む7人が乗車したが、運転手の園長1人で、他の職員は乗っていなかった。運転手は交通状況に注意を払わなければならない。乗車中の安全をどう確保するつもりだったのか。
 園到着後もずさんな対応が続く。園長は出欠確認の「バスカード」を回収せず、降りるのを手伝った保育士も残された園児がいないか車内を確認していなかったという。
 さらに担任は園児の姿が見えず、カードもなかったため欠席と判断。家族への出欠確認や点呼さえ行っていなかった。結局、帰りのバスに乗っていないことに気付いた母親が問い合わせるまで、園側は園児を把握していなかった。
 幼い子どもは大人が少し目を離しただけでも、予測のつかない行動を取りがちだ。園児の人数を常に確認することは、保育時の基本中の基本だろう。園児の不在が分かるタイミングは何度もあったはずだ。
 保育園の送迎バスは、同乗者の配置などに関する統一的な運行指針はなく、安全対策は園任せの実態がある。この園でも約10年前に運行マニュアルを作成していた。だが、ここ数年は活用されることなく形骸化していたようだ。
 人手不足の状況もあったようだが、対応の一つ一つがなおざりだった印象は否めない。この時季に求められる熱中症対策以前に、安全への意識そのものが低下していたのではないか。園全体が大事な子どもの命を預かる自覚に欠けていたというほかあるまい。
 今回の事故は園特有の運営状況が大きいとみられる。しかし、熱中症の危険性はあらゆるところに潜んでいる。毎年、車内に残された子どもの死亡事故が発生している。千葉県でも先月、自宅駐車場に止めた軽乗用車の中で1歳児が亡くなった。母親が車から離れたのは30分ほどだった。
 日本自動車連盟(JAF)の実験では、炎天下に止めると30分弱で車内の温度は40度を超える。近年はスマートキーの誤操作で子どもが閉じ込められるケースが増えているという。育児に関わる全ての大人が最大限の注意を払う必要がある。
 少しの時間でも車内に子どもを置き去りにしない。油断なく基本を徹底すれば、悲劇は防げることを改めて肝に銘じたい。

カテゴリー: 社説

ページトップへ