2021.08.10 08:00

【手上げ横断】車は歩行者優先の徹底を

 「歩行者優先」の原則、マナーが必ずしも守られていないということだろう。
 全国の警察が全世代を対象に、信号機がない場所での「手上げ横断」を指導することになった。交通死亡事故の中で最も多い歩行中の事故を減らすことが狙いだ。
 交通事故の死者数は2020年は2839人と、統計がある1948年以降初めて3千人を割るなど減少傾向にある。
 しかし、日本は欧米に比べて死者に占める歩行者の割合が高い。20年も事故時の状態別では最多で、全体の35・3%に当たる1002人が歩行中だった。歩行者の安全確保は最優先課題になっている。
 このため、警察庁はことし4月、道路交通法に基づく交通マナーをまとめた「交通の方法に関する教則」を改正した。43年ぶりに、信号機がない場所での横断について「手を上げるなどして運転者に横断の意思を明確に伝える」ことを歩行者の心得として盛り込んだ。
 歩行者優先思想の象徴とされる横断歩道での一時停止も、実行されていない現実がある。
 道交法は、歩行者がいないことが明らかな場合を除いて、車両は横断歩道の直前で停止できる速度で進行。歩行者がいる場合には一時停止し、通行を妨げないようにしなければならないと定めている。
 これを守らないドライバーによる「横断歩行者妨害」の摘発は近年、年間20万件を超える。
 日本自動車連盟(JAF)による19年の調査では、歩行者が信号機のない横断歩道を渡ろうとしている状況で一時停止する車は全国平均で17・1%だった。高知県内は7・8%とさらに低い。
 17年に一時停止しない理由を複数回答で尋ねたところ、「自分が停止しても対向車が停止せず(歩行者が)危ないから」「後続車がなく自分が通り過ぎれば歩行者が渡れる」という回答が4割以上に上った。ドライバーの論理が優先されていると言えよう。
 歩行者の側も、走る車の直前直後を横断したり、横断禁止の場所を渡ったりして、死亡事故の原因になるケースは少なくない。「いつも渡っているから」「危なければ車が止まってくれる」といった交通ルールを軽視した過信や油断が事故につながることを肝に銘じたい。
 高知県警も「手上げ横断」について、小学校低学年を中心に指導してきたが、対象を全世代に広げる。
 歩行者が一方的に合図して横断するのではなく、運転手の顔を見て認識させることがポイントだという。その上で、他の車にも注意して横断することが欠かせない。
 歩行中の交通事故は、歩行者とドライバーの双方が注意することで防げる事故も多いはずだ。ただ、車は歩行者に対して圧倒的に優位にあることも忘れてはならない。
 「手上げ横断」の指導を機に、相手を思いやる交通マナーの順守についてあらためて考えたい。

カテゴリー: 社説

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