2021.08.07 08:40
こうち★Showえいが「竜とそばかすの姫」
高知に住む女子高生の鈴。ネット上の仮想世界に参加し、歌姫「ベル」=右=として人気者になるが--
「細田守監督の新作アニメは高知が舞台のモデル」
この話を知って「おおーっ、すごい」と心が躍ったのは確か。一方で老婆心ながら「高知という設定がどこまで生かされるのか」とちょっぴり不安にもなった。インターネット上の仮想世界が物語の軸と聞けばなおさらだ。「自然豊かな日本の田舎」の記号性だけをすくい上げられると「高知映画」として肩すかしを食らうことも考えられるからだ。
さて、鑑賞してどうだったか。
まず言っておきたいのは「土佐弁は出てこない」こと。主人公は仁淀川流域に暮らす女子高生にもかかわらず、家族も含めてしゃべる気配は全くなし。意外とこれを気にして残念がる鑑賞者はいるのだが…。
ただし高知の風景描写は想像を上回ると言っていい。高岡郡越知町の浅尾沈下橋や高知市の鏡川沿いだけでなく、主人公の家、JR駅や駅前、バス停や直販所などが数多く描かれた。たとえ現地に行ったことがなくても、高知だと分かる。綿密かつ濃密な描写に支えられた「おらんく映画」と認定したくなる。龍馬や播磨屋橋などの高知の定番ランドマークを使わない点は逆に好感が持てた。
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