2021.08.03 08:40
まるで本物?立体金魚絵、夏の情緒...高知県立美術館で深堀隆介展
金魚酒 命名 出雲なん/2019
本物と見まがうリアルな金魚。圧倒的な立体感を生む斬新な技法で世界的にも評価が高い現代美術家、深堀隆介さん=神奈川県在住=の作品展「金魚鉢、地球鉢」が高知市高須の県立美術館で開催中です。四国初の展覧会は、懐かしい和の情緒を感じさせ、盛夏にもぴったり。家族や友人と涼みに行きませんか。(高知新聞企業事業部)
深堀さんは1973年、愛知県生まれ。同県立芸術大学美術学部デザイン・工芸専攻学科を卒業後、99年からアーティストとしての活動を始めました。制作は程なく行き詰まりましたが、ある出来事が転機になりました。
オフィシャルサイト「金魚養画場」に、そのエピソードをつづっています。
〈ある日、「ああ、もう美術なんてやめてしまおう」と思った。自室で寝転がった時、ベッドの横にあった小さな水槽が目にとまった。そこには七年前夏祭りですくってきた金魚が一匹いた〉
掃除もしていない汚れた水槽で生き続ける金魚の美しさに心を打たれたそうです。
「この子がきっと僕を救ってくれる」。そう信じ、赤い絵の具で無心に筆を走らせました。深堀さんはこの日の出来事を「金魚救い」と呼び、試行錯誤を重ねながら、金魚をみずみずしく描く技法を追求しています。
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深堀さんが編み出した技法は「2・5Dペインティング(積層絵画)」です。
升や椀(わん)、骨董(こっとう)机の引き出しの中など、さまざまな“器”に透明樹脂を流し込み、固まったらアクリル絵の具で金魚の体を少しずつ描く。さらに樹脂を流し込み、固まったら…そんな作業を繰り返します。
階層的に描くことで絵が重なり合い、金魚のうろこの光沢、ひれの薄さや繊細さ、そして水の流れまでが調和し、透き通った空間に精密で立体的な金魚が浮かび上がる―というわけです。
展覧会では、こうした技法を用いた作品のほか、絵画やインスタレーション(空間芸術)など約270点を並べ、深堀さんの幅広い仕事を紹介していますので、じっくり鑑賞してみてください。
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開場時間は午前9時~午後5時(最終入場は午後4時半)で、29日(日)までの会期中は無休。新型コロナウイルス感染拡大防止策を講じて開催し、状況によっては入場を制限する場合があります。
問い合わせは、高知新聞企業事業部(088・825・4328=平日午前9時半~午後5時半)へ。
【入場料】平日=一般千円、中高生600円、小学生400円▽土日祝日・盆期間(13~16日)=一般1200円、中高生700円、小学生500円 ※未就学児は無料