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2021.08.03 08:00

【「桜」不起訴不当】検察は改めて徹底捜査を

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「政治とカネ」を巡る問題は曖昧にはできないという判断を明確に打ち出したといえる。
 「桜を見る会」前日に主催した夕食会の費用補塡(ほてん)問題で、安倍晋三前首相を不起訴とした処分の一部を、検察審査会は「不起訴不当」と議決した。東京地検特捜部は再捜査し、改めて処分を決める。徹底解明が求められる。
 検審の付言は、秘書がやったことだとして関知しない安倍氏の姿勢は「国民感情として納得できない」と批判した。その通りだろう。こうした指摘を安倍氏は重く受け止め、説明責任を果たすべきだ。
 特捜部は2016~19年分の政治資金収支報告書に収支計約3022万円を記載しなかったとして、政治資金規正法違反罪で元公設第1秘書を略式起訴した。一方、夕食会の参加者には寄付を受けたという認識がなかったとして、安倍氏を不起訴とした。
 検審は、二つの容疑を不起訴不当と議決した。有権者に寄付行為をしたとする公選法違反容疑については、「一部の参加者の供述だけで判断するのは不十分」と指摘した。安倍氏の認識についても、本人の供述だけでなくメールなど客観資料も入手して判断すべきだとした。
 また、資金管理団体「晋和会」の会計責任者の選任・監督に対する注意義務違反があったとする政治資金規正法違反容疑も挙げた。晋和会の収支報告書の不記載に関し、十分な捜査が尽くされたとは言い難いとして、会計責任者とともに安倍氏の容疑も捜査を求めた。
 検察は、判断にこうした異議を唱える動きが続いていることを真剣に受け止めないといけない。菅原一秀前経済産業相が地元有権者に香典などを提供した問題では、いったんは不起訴処分とした。しかし検審が「起訴相当」を議決し、再捜査の結果、略式起訴となった。
 今回は起訴相当の議決ではない。再捜査で不起訴となったとしても、2度目の審査は行われず強制起訴はない。もちろん、そのために不起訴ありきの再捜査をするとは思えないが、「桜」問題の解明は世論の関心が高く、検察に対しても厳しい視線が向けられていることはしっかりと認識する必要がある。
 言うまでもなく、安倍氏が率先して疑惑の解明に努めることが重要だ。安倍氏は国会での質疑で、事実と異なる答弁を100回以上行ってきた。昨年12月、不起訴後に事実に反していたと認め、陳謝している。
 しかし、夕食会会場となったホテル側の領収書や明細書を開示すれば疑念は相当に排除できたはすだが、そうした姿勢を見せなかった。これでは混乱を長引かせるだけで、政治不信を増幅させてしまう。
 新型コロナウイルス対策を巡り、政治家の言葉が国民に響かない現状が危惧されている。その場をかわしさえすれば何とかなるという国会軽視のつけが顕在化しているようにも思える。この風潮を断ち切らなければ政治不信は深まるばかりだ。

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