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2021.08.02 08:00

【教員免許更新制】負担減へ廃止が必要だ

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教員免許に10年の期限を設ける「教員免許更新制」について、文部科学省が廃止を検討している。
 更新講習を受ける教員の負担が大きく、萩生田光一文科相は中央教育審議会に「抜本的見直し」を諮問している。
 教員の資質向上を目的にして2009年4月に導入されたが、当初から学校現場では制度を疑問視する見方が強かった。多くの弊害が指摘されており、廃止に向けた動きは遅すぎるとも言える。
 現場の実情に即した、教員の意欲を高めるような資質向上策が求められている。
 教員免許はもともと終身制だった。第1次安倍晋三政権下で「指導力不足の教員がいる」という批判の高まりを受けて、更新制導入に向けた議論が進められ、07年に教育職員免許法が改正された経緯がある。
 今回の廃止への動きは、誤った政治主導を認める政策転換と言えよう。10年以上も学校現場に大きな混乱を招いた政治の責任は重い。
 更新制では期限前の2年間のうちに、大学などで30時間以上の講習を受けることを義務付けている。学ぶ内容は国内外の教育施策、いじめや不登校への対応、英語教育などだ。
 講習は主に夏休みや土日に実施され、教員は休み返上で臨んでいる。3万円程度かかる受講料や交通費は自己負担となる。教員の多忙さに拍車をかけ、金銭的負担も重いことが批判されてきた。
 講習の効果も評価されていない。文科省が先月公表した教員へのアンケートによれば、6割近くが講習に不満を持っている。4割近くが役に立たないと回答し、「現実と懸け離れており、実践的な内容ではない」との指摘が目立った。
 その上で廃止を求める意見が多かった。こうした現場の声を重く受け止める必要がある。
 文科省は廃止に向け、早ければ来年の通常国会での法改正を目指している。ただ、与党の一部には存続を求める意見もある。
 しかし、更新制は深刻化する教員不足への対応においても弊害になっている。産休や病気休暇の代替教員として、退職後の教員に働いてほしくても、免許が切れており人材を活用できないケースは少なくない。
 定年前に更新時期を迎えたことで早期退職する場合もあるという。教壇に立てる人材を失わないためにも更新制は見直すべきだ。
 文科省は今後の資質向上策として、教員ごとの成果や目標を明確にする仕組みの導入も検討している。
 現状の更新講習でも、情報通信技術(ICT)を活用する講習などは評価が高い。それら求められている研修を強化したい。
 教員がオンラインで研修できる機会を増やすなど、働き方改革に逆行しない工夫も外せない。
 教員が業務に忙殺されず、新たな知識や技能を習得できる時間を確保したい。その成果を子どもたちの教育に生かす体制づくりを目指さなければならない。

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