2021.08.01 08:00

【政変半年】ミャンマーは民政復帰を

 ミャンマー国軍によるクーデターから1日で半年になる。
 アウン・サン・スー・チー氏が率いた政権を転覆させた国軍は全権を掌握し、民主派への弾圧を続けている。人権団体のまとめでは犠牲者は900人を超える。
 昨年11月の総選挙で、国軍系の政党は惨敗した。選挙の不正を主張する国軍は、民政移管のための再選挙を行う意向を示してクーデターを正当化しているが、容認できない。
 暴力を停止し、拘束した政治家らを解放することが求められる。対話を通して国民の意思を尊重した政治的安定を取り戻すことが必要だ。
 クーデターを起こした2月1日には、第2次国民民主連盟(NLD)政権が発足する予定だった。民政移管後も権益を維持する国軍への不信感を背景に、NLDは総選挙で圧勝した。国軍は影響力の削減を嫌い暴挙に及んだと指摘される。
 国軍が任命した選挙管理委員会は、総選挙は無効と正式に判断した。軍政はこれを根拠にNLDを解党処分とするとみられる。民主派による「挙国一致政府(NUG)」はテロ組織に位置付けている。
 国軍は複数政党による連邦国家の樹立を掲げるが、国軍が事実上管理する政権の誕生を国民が望んではいないことは明らかだ。そもそも、民主化勢力に出馬の機会が与えられるかは不明で、再選挙が公正に行われるかどうかさえ疑わしい。
 クーデター以降、住民側は大規模な抗議デモを繰り広げた。取り締まりが厳しくなる中、今も散発的に行われているようだ。職務を放棄する「不服従運動」も続く。
 外交官が国軍への不服従を表明する動きも出ている。サッカー・ワールドカップ予選で来日した選手は帰国を拒んで難民認定を申請した。
 国軍に対抗するため武装する市民も現れている。民衆への攻撃がこのような動きを招いている。武力は国軍の優位は揺るがない。治安当局は自制が求められる。
 市民生活は新型コロナウイルスの感染で混乱が拡大している。医療従事者の職場放棄もあり、病院が患者を受け入れられなくなっている。医療用酸素の不足も深刻なようだ。
 経済活動も混迷を深めている。物流の停滞や現金不足が物価の上昇につながっている。経済成長率は大幅なマイナスが見込まれる。
 400社以上が進出している日本企業も事業継続に苦慮している。抗議デモの減少で事業を再開する動きがある一方、安全面から操業を停止したままの企業もあるようだ。
 経済活動は、その「質」も問われている。国軍が関連する企業には厳しい視線が向けられる。人権問題をないがしろにしては国際的な批判を受けかねない。事業展開には難しい判断を迫られる。
 東南アジア諸国連合(ASEAN)は内政不干渉の立場だが、域内の不安定化を見過ごしていては存在感が揺らいでしまう。日本も国軍との独自のパイプを生かし、事態打開への努力を重ねる必要がある。

カテゴリー: 社説

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