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2021.07.27 08:00

【宮本選手入賞】次へつながるレガシーだ

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 東京五輪の女子シンクロ板飛び込み決勝で、土佐女子高校出身の宮本葉月選手(近大)が5位入賞を果たした。
 高知県出身では唯一の出場で、個人種目の入賞は1956年メルボルン大会の競泳男子200メートルバタフライで銀メダルを獲得した石本隆さん以来の快挙となる。おめでとう。夢の舞台まで積み重ねた努力を県民とともにたたえたい。
 宮本選手は2018年秋から、榎本遼香選手(栃木県スポーツ協会)とペアを組み、小さい頃から目標だったという五輪を目指した。世界のトップアスリートだけが集う舞台である。二人三脚で歩む道のりも決して平たんではなかった。
 19年夏の世界選手権では緊張で実力を出し切れず、出場権を得られない挫折を味わった。さらに昨年は五輪が延期され、代表選考も先延ばしとなった。
 先の見えない状況に、宮本選手も「何のために練習をしているのか」と漏らしたこともあったという。それでも不安を乗り越える精神力こそがオリンピアンの証しと言えよう。今年5月のワールドカップ(W杯)で切符を手にした。
 本番では最終5本目の演技で得点が伸びず、惜しくも5位。宮本選手は「満足のいく結果を得ることはできなかった」とコメントした。3本目で高得点を挙げ、上位進出も狙える展開だっただけに悔しさがこみ上げたのかもしれない。
 しかし、世界が注目する中で堂々と2人の演技を全うしたことは見事というほかない。県出身者として個人で65年ぶりの入賞は、県民の応援に十分に応えた成果と言える。
 宮本選手は今も高知スイミングクラブ(SC)に籍を置く。02年高知国体を契機に高知SCの強化が始まり、一時の低迷を経て全国トップ級の選手が出るようになった。コーチの瓶子(へいし)勇治郎さん、笑里佳さん夫妻ら関係者の地道な取り組みがあった。
 宮本選手が度々、高知への感謝を口にするのは、そうした経緯を強く意識しているからだろう。
 五輪入賞でこれまでの指導に報いただけでなく、子どもたちも夢を実現する難しさと喜びを感じ取れた。本県のスポーツ界にとって大きなレガシー(遺産)だ。
 東京五輪は史上初めて1年延期され、観客数など大会運営を巡って二転三転し、不祥事も開幕まで相次いだ。競技者としては調子を整え、モチベーションを維持するのがこの上なく難しい環境だったはずだ。
 さらに新型コロナウイルス感染症の広がりで、大会への風当たりも強い。スポーツとは何か。選手ができることは。本来、競技に打ち込む選手の範疇(はんちゅう)を超えた事柄を考えさせられたに違いない。
 そうした苦悩は、東京五輪を目指した選手にしか体験できないことでもある。宮本選手にとって選手生活でも、今後の人生でもかけがえのない財産となろう。さらなる活躍へとつなげてほしい。
 

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