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2021.07.25 08:00

【不妊に保険適用】治療の負担減らす支援を

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 政府は不妊治療のうち、広く行われている体外受精などを来年4月から、公的医療保険の適用対象とする方針を固めた。
 菅政権による不妊治療支援の目玉施策である。経済的負担の軽減を図り、治療のハードルを下げることで出生数増につなげたい考えだ。
 不妊治療は心身にかかる負担も大きく、治療に取り組む女性の離職も問題になっている。社会の支援体制を強化し、不妊治療に挑戦しやすい環境づくりを目指す必要がある。
 現在、不妊治療は一部を除いて自己負担となっている。高度な治療になるほど費用も高くなる。
 2018年度の厚生労働省研究班の調査では、卵子を採取し受精させて体内に戻す「体外受精」の平均費用は1回38万円、精子を卵子に注入する「顕微授精」は43万円に上る。
 1回でなく何回も行うことも多い。高額になった治療費に充てるため貯金を切り崩すなど、経済的負担の重さから子づくりを諦めるケースが後を絶たない。
 保険適用の対象に検討されているのは、日本生殖医学会が示した治療法のガイドラインで、レベルA(強く推奨)とB(推奨)とされた項目だ。例えばAには体外受精と顕微授精のほか、勃起障害を伴う男性不妊への薬剤治療、胚(受精卵)の培養などが挙げられている。
 実現すれば、自己負担は原則3割に軽減される。治療に挑戦する機会を広げることが期待される。
 厚労省は中央社会保険医療協議会で議論を始め、年末までに保険適用の範囲を決める見通しだ。
 また、厚労省は不妊治療支援の一環として、流産や死産を経験した女性の心のケアにも乗り出した。
 母子保健法上の支援対象であることを明確化。悲しみや喪失感を支える「グリーフケア」をきめ細かく実施するよう、自治体に促した。
 これまで支援が十分でなかった、流産や死産を繰り返す「不育症」の対策強化にもなる。厚労省研究班の推計では、年間3万1千人が2回以上連続して流産を経験している。
 多くの人が子どもをなかなか授かれないつらさに苦しんでいる。不妊は打ち明けづらく、悩みを抱え込みやすい。体外受精など高度不妊治療を受けている女性の半数以上が軽度以上の抑うつ症状を抱えている―。そうした国内の調査結果もある。
 職場の理解も広げていかなければならない。不妊治療は通院の回数が多く、数年に及ぶ場合も少なくない。負担が重なり、仕事をしながら治療している女性のうち約4人に1人が離職してしまうとされる。
 治療のための休暇が柔軟に取得できるなど、国は企業に支援制度の導入を働き掛けていくべきだ。
 不妊治療は妊娠や出産につながらない場合もある。自然に任せると考え、治療を受けない選択肢もある。子どもを持たない夫婦の在り方など、多様な生き方を尊重したい。その点を踏まえた上で、社会の理解を深めていくことが支援策の根幹となろう。

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