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2021.07.24 08:00

【訪日見送り】日韓首脳の対話へ努力を

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日韓の首脳が対話する機会を設けることができなかったことは、冷え込む両国関係を映し出すようだ。東京五輪開会式に合わせた韓国の文在寅(ムンジェイン)大統領の訪日が見送られた。
 韓国側は訪日の条件として、両国の懸案に関して成果が出せるような菅義偉首相との会談の開催を掲げていた。しかし、協議の結果、実現は困難と判断したという。
 韓国側には、日本による輸出規制措置の撤回などの成果を得たい考えがあった。一方、日本政府は韓国側に元徴用工問題の具体的な解決策を提示するよう求めてきた。
 文氏の訪日を駆け引きの材料にして、事態の進展を求めてせめぎ合った。しかし、懸案を巡り双方に歩み寄る気配は乏しく、一致点にはたどり着けなかったようだ。
 韓国では、文氏の後継を決める大統領選を来年春に控える。韓国側の歴史問題への対応に不信感を強めている日本側にとって、任期満了を迎えようとする文氏との会談で懸案を解決しようという意欲は乏しい。
 一方、日本でも近く衆院選が予定される。強い態度を見せなければ保守層の離反を招きかねないとする見方も根強い。両国ともに、弱腰の印象を与えるような妥協は選挙にマイナスという判断が前面に出やすい環境にあった。
 また、駐韓総括公使の不適切発言の影響も無視できない。反発は外交交渉での負い目となりかねない。反省が求められる。
 慰安婦問題を巡る日韓政府間合意を軽んじ、元徴用工への賠償を日本側に求めた裁判所判決など、歴史問題を蒸し返す韓国側の対応に日本側の反発は強い。一方、韓国世論は植民地支配に絡む被害者救済の動きを支持してきた。
 関係改善は簡単ではない。文氏の訪日見送りの発表後に東京で開かれた日韓の外務次官会談でも歴史問題を巡って互いに譲らず、原則的立場の主張に終始したようだ。
 ただ、外交当局間の意思疎通は継続する方針は確認したという。成果を期待するような段階ではないが、取り組みを重ねる中で解決への道筋が探られることを期待したい。
 日韓ではかつて、両国首脳が頻繁に相互に往来する「シャトル外交」を推進しようとした。だが、軌道には乗っていない。特に近年は停滞しており、顔を合わせることすら難しい状態となっている。
 文氏が2019年6月に20カ国・地域首脳会議(G20大阪サミット)で来日した際は、当時の安倍晋三首相との立ち話すらしていない。先月英国で開かれた先進7カ国首脳会議(G7サミット)でも、菅氏とあいさつを交わしただけという。行き詰まる両国関係を物語る。
 こうした状況が望ましいはずがない。日韓、日米韓の連携を、北朝鮮の核・ミサイル問題をはじめ地域の安定につなげる必要がある。
 「未来志向」という言葉も脇へ押しやられた感がある。史上最悪という状況を改められるよう、対話を通して新たな関係を構築したい。

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