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2021.07.19 08:00

【10増10減】衆参の在り方を熟議せよ

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地方からの人口流出、首都圏への一極集中は刻々と進む。国会議員定数が早々に削減されてきた高知県などが訴える「地方の声が国政に届きにくくなる」という懸念は、さらに広がりそうだ。
 総務省が2020年国勢調査の速報値を公表した。衆院選の「1票の格差」是正を踏まえた新たな議席配分方法「アダムズ方式」を適用した結果、衆院の小選挙区は15都県で10増10減の見直しが必要になった。
 現行小選挙区の格差は最大2・094倍になっている。10増10減に基づく改定では東京5、神奈川2、埼玉、千葉、愛知が各1増。東日本大震災で被災した宮城、福島や隣県の愛媛など10県で各1減となる。
 秋に見込まれる次期衆院選は現行定数で行われる。改定する区割りでの衆院選は、公選法改正を経て22年以降となる見通しだ。
 最高裁は、格差が2倍を超えた09~14年の3回の衆院選をいずれも「違憲状態」と判断。都道府県に無条件で1議席ずつを割り振る「1人別枠方式」を格差を生む要因と断じ、廃止を迫ってきた。
 国会は解消策として、人口比を正確に反映しやすいアダムズ方式を20年国勢調査人口を基準に導入する関連法整備を進めた流れがある。
 1票の格差是正は、憲法の「法の下の平等」が求める投票価値の平等に基づく。それは民主主義の根幹をなす選挙制度の大前提である。
 ただ、東京は比例ブロック定数の2増も合わせて一挙に計7議席も増える。国会議員の大都市偏在が進み、震災の被災地をはじめ「地方軽視」「地方切り捨て」といった不満が渦巻いているのも理解できる。
 本県は14年衆院選から小選挙区が1減の2選挙区となり、16年参院選からは隣県・徳島との合区が導入された。過疎・高齢化への対応など地方の課題を抱える首長らから「日本の政治が都会中心になっていく」という危機感が早くから出ていた。
 ことに隣県と統合される参院選の合区については、専門家にも「1票の不平等とは別に、新たな不平等が生じた」という指摘がある。
 今後も地方から大都市部への人口流入は続くとみられる。現行制度のままでは、衆院小選挙区の集中や参院の合区が拡大し、議員の大都市偏在は一層進むことになろう。
 衆院ではアダムズ方式を導入した関連法の成立以降、選挙制度に関する議論は事実上、棚上げにされた感は否めない。参院は、19年参院選までに「抜本的見直しについて必ず結論を得る」と改正公選法の付則に明記。その「約束」には程遠い小手先の数合わせが続いている。
 本紙は衆院のカーボンコピーとやゆされて久しい参院の独自性を立て直し、衆参の役割分担を明確にするよう求めてきた。衆院選でも疑問の声が出てきたこの機会を捉え、抜本的改革を熟議すべきではないか。
 二院制の下で多様な民意をどう反映させていくか。本質的な議論をなお先送りするようでは、国会は怠慢のそしりを免れまい。

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