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2021.07.14 08:00

【発電コスト】再生エネの優位性を磨け

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 2030年時点の各電源の発電コストについて経済産業省が示した新たな試算は、太陽光が最安になった。これまで最も安いとされた原子力のコストが上昇し、太陽光は初めて原子力を下回った。
 原子力は東京電力福島第1原発事故を受けた規制強化に伴い、安全対策費が膨らんだ。このため前回15年の試算より1割程度上がった。
 改正地球温暖化対策推進法は、50年までの脱炭素社会の実現を明記している。そのためには、大規模な省エネルギーとともに、二酸化炭素(CO2)排出量の4割を占める電力部門の対応が鍵を握る。中期目標では、30年度の排出量を13年度比で46%削減する。取り組みの加速が求められている。
 太陽光など再生可能エネルギーは導入量の増加で主力電源になると見込まれる。今夏をめどに改定する「エネルギー基本計画」に合わせた電源構成の新目標は、現行より引き上げる方向で検討されている。
 火力は縮小へ国際的な圧力がある。そこで、原子力は目標を維持するとの見方が出ている。CO2を排出しない再生エネと原発の電源割合を引き上げることで補うことをもくろむ。発電コストを巡っても、経産省は原子力の安さを強みと位置付けてきた。だが、その見方も安全性とともに揺らいでしまった。
 災害などを想定した事故防止対策のコスト増加が見込まれる。第1原発の廃炉で最難関とされる溶融核燃料(デブリ)の取り出し費用などは含んでおらず、コストはさらに上昇することは間違いない。
 この試算は発電設備を新たに更地に建設して運転した場合を前提としている。土地取得の費用などは含まず、利用状況などで数値は変動するとはいえ、運転開始から40年を過ぎた原発が再稼働する中、新増設は厳しい状況だ。
 石炭火力はCO2排出抑制の対策費がかさむため、上昇を見込む。
 一方、太陽光の発電コストは、事業用、住宅向けとも下がるとした。世界的に普及が進むことでパネルなどの価格が低下するとみる。陸上風力や液化天然ガス(LNG)火力なども、発電コストを最も安く見込んだ場合の試算値では、原子力の発電コストを下回った。
 ただし、再生エネへの期待を膨らませても、導入は簡単に拡大するものではない。送電網の整備費などは今回の試算に含まれていない。天候に左右される発電条件など、乗り越えなければならない課題も多い。
 来年4月施行予定の改正温対法は、太陽光や風力発電などの促進区域を市町村が設定する制度を創設する。手続きの簡素化や資金面での優遇を想定している。
 だが、生態系や景観の悪化を懸念する住民らの反対運動も目立つようになった。国は土砂災害などが想定される地域は指定対象から除外する方針のようだが、地域の混乱を誘発するようでは本末転倒だ。再生エネの優位性を生かすように、きめ細やかな対応が求められる。

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