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2021.07.08 08:00

【受領100人不起訴】公正性は維持できるのか

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 選挙犯罪の捜査に影響を与えないか危惧される判断だ。
 2019年7月の参院選広島選挙区を巡る買収事件で、東京地検特捜部は現金を受け取ったとして公選法違反(被買収)容疑で告発された地元議員ら100人全員を不起訴とした。
 元法相の前衆院議員、河井克行被告=控訴=は公選法違反(買収など)の罪で実刑判決を受けている。一律不起訴は、受領側も罪に問うと規定する公選法適用の公正性をゆがめてしまう。
 東京地裁は今年6月、元法相に懲役3年、追徴金130万円の実刑判決を言い渡した。判決は、元法相は妻の案里氏=同法違反罪で有罪確定=の当選を目指し、100人に計2870万円を配った。案里氏はうち4人に160万円を配ったとした。
 一方、特捜部は受領側の刑事処分を見送っている。このため、広島の市民団体が100人に対する告発状を提出していた。
 今回、100人のうち99人は起訴猶予とし、残る1人は死亡による不起訴となった。受領した金額は5万~300万円で、22人は複数回にわたり受け取っているという。
 40人は広島県内の当時の首長や県議、市町議だ。民主主義の根幹である投票行動を金銭でゆがめる行為に関与した責任は特に重い。一部は辞職したが、大半が政治活動を続けているという。政治とカネの問題の根深さを見せつけられるようだ。
 地裁判決は、参院選の情勢が厳しいため、元法相が「受領を拒む相手に何度も迫り、無理やり受け取らせた」と述べ、悪質な場合も少なくないと指摘している。
 受け取った側からは、強引な提供を拒めず、その後を考えれば返すことさえはばかられたとする声もある。地検は、元法相との関係や、一方的に現金を提供された状況などを考慮し、100人の悪質性は低いと判断したとする。
 また、不起訴を示唆するような取り調べもなかったとした。18年に導入した司法取引制度は、公選法は対象外とする。元法相側は、地元議員らが検察の意に沿う証言をすれば刑事責任を問わないとする違法な取引があったと主張したが、判決も違法性はなかったとしている。
 しかし、今回は事実上の司法取引との見方も出ている。大規模な買収事件で、金額には多寡がある。対応に困難はあるにしても、多額の金銭を受け取って罰金刑にすらならない判断には大きな違和感がある。
 告発した市民団体は、不起訴を不服として検察審査会に審査を申し立てるという。菅原一秀前経済産業相=衆院議員辞職=の公選法違反罪を巡っては、審査会の「起訴相当」決議を受けて再捜査した結果、略式起訴した。今後を注目したい。
 買収資金の原資もはっきりさせなければならない。自民党本部が夫妻の政党支部に1億5千万円を投入し、当時の安倍晋三首相や官房長官だった菅義偉首相らが支援してきた。政治とカネを曖昧にしたままでは不信感が積み上がっていく。

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