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2021.07.07 08:00

【国際課税強化】税逃れ許さぬ仕組みを

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 経済協力開発機構(OECD)が二つの国際課税強化に大枠合意した。巨大IT企業などの税逃れを防ぐデジタル課税と、各国共通の最低法人税率「15%以上」の導入だ。
 世界経済の公平性を高める上で、歴史的な合意と言える。各国の税収が増え、財源確保につながることも期待される。目標である2023年の実施を実現させたい。
 大枠合意に賛同したのは、日米欧の先進7カ国(G7)と中国、インドを含む130カ国・地域だ。
 9、10日に開かれる20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議で、実現に向けた決意を共同声明に盛り込むことを目指す。
 デジタル課税とは、国内に支店や工場といった拠点がなくても、通信販売などのサービスの利用者がいれば各国が課税できる仕組みだ。
 対象として「GAFA(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン・コム)」をはじめとする米巨大IT企業が念頭に置かれた。
 現行のルールでは、国内に拠点がなければ原則的に課税できない。巨大IT企業はそこを「抜け道」にする形で、各国で大きな利益を上げながら巧みに納税を免れてきた。
 国内企業と競合している場合も、法人税を納めるのは国内企業だけだ。競争する上で不公平と言える。
 デジタル課税の対象は、世界での売り上げが200億ユーロ(約2兆6千億円)超で、売上高に占める利益の割合が10%超の100社程度とする。
 利益率が10%を超える部分の20~30%を、各国での売上高に応じて配分する。OECDは年間1千億ドル(約11兆円)を超える利益が各国に割り当てられると推計している。
 もう一つの柱である最低法人税率は下限を15%とし、年間総収入が7億5千万ユーロ以上の多国籍企業に適用する。低税率国やタックスヘイブン(租税回避地)を活用した過度な節税をしにくくする。
 長年にわたって繰り広げられてきた、自国への企業誘致を目的とした法人税の引き下げ競争に歯止めをかける。その上で、各国間の税収配分を公平にする狙いがある。
 二つの課税強化はいずれも、国境を超えた「荒稼ぎ」に応分の税負担を求めるものだ。経済のデジタル化に追いつく改革とも言える。
 世界的に「富める者がさらに富む」富の偏在が問題になっている。格差を是正していくためにも課税強化が不可欠である。
 ただ、実施に向けては曲折が予想されている。多国間条約の締結や各国の国内法改正が必要になる。
 大枠合意では、具体的な最低法人税率や、デジタル課税の各国への税収配分割合は結論を持ち越した。10月を交渉期限として、G20の会議で最終合意することを目指す。
 最低法人税率に対して、中国や一部の新興国が例外措置を求めるなどの攻防も起きている。
 課税は公平であることが大前提だ。自国に有利になる「抜け道」は許さず、実効性のある仕組みづくりを急がなければならない。

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