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2021.07.06 08:00

【骨太・成長戦略】財政健全化を忘れるな

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 菅政権では初めてとなる経済財政運営の指針「骨太方針」と成長戦略は、予算編成などで脱炭素などのグリーン、デジタル、地方、子どもの四つの課題に重点的な投資を行う考えを盛り込んでいる。
 新型コロナウイルス感染症は、日本のデジタル化対応の遅れをあぶり出した。温室効果ガスの排出量を2050年までに実質ゼロとする方針は国際公約でもある。
 地方は人口減少が深刻化する。また、子どもの貧困や虐待への対応、ヤングケアラー支援と多くの課題に直面している。
 経済、社会構造の変化を直視して対策を着実に進める必要がある。菅政権がこれまでに打ち出した改革の方向性に沿って政策の具体化を図るが、言うまでもなく無駄は排除しなければならない。国民生活の向上につながるように、きめ細やかな対応が求められる。
 経済活動の本格化にはコロナの収束が重要となる。ワクチンの全希望者への接種は10~11月に終えることを明記した。また、緊急時対応をより強力な体制と司令塔の下で推進することや、治療薬やワクチンのより早期の実用化など有事に対応できる法的措置の検討などを掲げた。
 コロナを巡っては、感染検査や病床の確保、ワクチン接種など対応の遅れや多くの制度不備が浮き彫りになった。国の一方的な指示と地方の実情とのずれも目立った。連携の強化や体制整備は不可欠となる。掛け声だけにとどまっているようでは混乱が繰り返されてしまう。
 脱炭素化への動きでは、二酸化炭素(CO2)の排出量に応じて企業に課税する「炭素税」や排出量取引の制度化に言及している。だが、踏み込みに乏しく、温暖化防止対策の強化へ本腰を入れているのか危惧する見方も出ている。取り組みに対する国際社会の視線は厳しい。具体策が問われている。
 課題と向き合い対処することは当然だ。一方で、財政再建の熱意が薄れてはいないか気になる。
 政府は25年度に国と地方の基礎的財政収支(プライマリーバランス)を黒字化する財政健全化を目指し、債務残高の国内総生産(GDP)比を引き下げる目標を掲げてきた。今回もこれを堅持するとしている。
 同時に、21年度中に検証し、目標年度を再確認する姿勢を示す。コロナの感染拡大に伴う景気の落ち込みや対策に伴う歳出の増加で、経済財政状況が不安定なことが理由だ。
 確かに、コロナ対応での財政出動は避けられない。収束が見通せない状況では、暮らしや雇用を守る施策や医療体制を強化する機動的で丁寧な予算措置が必要となる。景気回復へ事業支援も欠かせない。
 だからといって、無秩序に膨張させてよいものではない。無駄がないように監視し、緊急性や有効性を検証することが重要だ。21年度予算は過去最大に膨らみ、4割を国債発行で賄う。基礎的財政収支の赤字は20兆円超に拡大している。放漫な財政運営に陥ることは許されない。

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