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2021.07.02 08:00

【児童死傷事故】あらゆる対策を徹底して

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 痛ましい交通事故がまた起きた。子どもの未来が奪われないよう、あらゆる手を尽くして通学路の安全対策を進める必要がある。
 千葉県八街(やちまた)市の市道で、歩いて下校していた児童の列に大型トラックが突っ込み、5人が死傷した。運転手は飲酒を認めており、自動車運転処罰法違反(危険運転致死傷)の疑いで送検された。
 事故の詳細は捜査の進展を待たなければならないが、飲酒の影響は見過ごせない。
 運転手は千葉県内と東京都内にある建設現場に資材を運んだ後、勤務先に戻る途中で事故を起こした。事故後の検査で呼気から基準値を超えるアルコールが検出され、「帰る途中に酒を飲んだ」などと供述しているという。
 飲酒運転を巡っては、2001年に危険運転致死傷罪が刑法に新設され、05年には最高刑が懲役15年から20年に引き上げられた。14年には危険運転致死傷の適用範囲を広げる自動車運転処罰法が施行されるなど、厳罰化されてきた。
 その過程には、飲酒運転によって理不尽に命を奪われた犠牲者や遺族の無念があった。勤務でまだ運転することを自覚しながら飲酒し、新たな犠牲を出した運転手は言語道断と言うほかない。
 大型トラックは自家用(白ナンバー)で、運転手の雇用先にアルコール検査は義務付けられておらず、事故当日も検査をしていなかった。
 ただし、運送事業者として従業員の管理が適切に行われていたのかという疑問は拭えない。ドライバーの飲酒運転撲滅に向け、検査義務の範囲をより拡大するといった対策が必要ではないか。
 通学路の安全性も改めて見つめ直す必要がある。
 警察庁の統計では、16~20年に歩行中の事故で亡くなるか重傷を負った児童2700人余りのうち、約3分の1は登下校中だった。
 今回の事故現場も直線道路で見通しがいい半面、歩道やガードレールはなかった。スピードを出す車も多く、PTAからガードレール設置の要望も出ていた。
 12年に京都府亀岡市で無免許運転の車が児童の列に突っ込み3人が死亡した事故が契機となって、通学路の安全対策は進んできた。
 県内では児童が通る道路端を色分けする「グリーンベルト」や児童の待避所が設けられた。全国では生活道路で最高速度を時速30キロに制限する「ゾーン30」も4千カ所以上に整備された。ハード面の対策は予算の制約があり、整備に時間もかかる。優先順位をつけながら、より効果的に対策を進めたい。
 ソフト面を含め、これまでも子どもを事故から守るための試行錯誤が続いてきた。即効性のある対策は難しいにしても、積み重ねた対策一つ一つが少しずつでも子どものリスクを下げることにつながる。
 家庭や学校、道路管理者が連携しつつ、安全の向上へ息の長い取り組みを徹底していくことが重要だ。

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