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2021.07.01 08:35

絵金の絵馬提灯24点を確認 香南市アクトランドが購入、調査 盗賊・石川五右衛門描いた連作

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絵金作の絵馬提灯に描かれた石川五右衛門処刑の場面

 高知県内神社の夏祭りで飾られていたとみられる「絵馬提灯(ぢょうちん)」24点を購入し調べていた創造広場「アクトランド」(香南市野市町大谷)は、幕末の絵師、金蔵(絵金)の作品であることを確認。同館でこのほど展示を始めた。絵金本人による絵馬提灯が確認されたのは、3例目となる。

絵金が創作した処刑後の五右衛門親子を描いた場面。当時の夏祭りの雰囲気で展示されている(香南市のアクトランド)


 絵馬提灯は、絵を描いた和紙を箱型の木枠に貼り、神社の夏祭りで参道などにろうそくをともして飾られたもの。「行灯(あんどん)絵」とも呼ばれ、祭りが終わると燃やされる消耗品だったため現存数が非常に少ない。幕末・明治初期以降、絵金とその弟子たちが、芝居絵屏風(びょうぶ)などとともに描いたとされる。

 今回確認されたのは、安土桃山時代の盗賊、石川五右衛門の生涯を描いた連作。アクトランドが3年前に県内の個人から購入し、絵金の研究者でもある横田恵学芸員が調査していた。真筆とされている県立美術館所蔵(12点)と香南市の個人所蔵(12点)の絵馬提灯と比較して鑑定。絵金に詳しい同美術館元館長、鍵岡正謹氏の協力も得て、文字や筆致などから絵金の真筆と確認した。

 縦45センチ、横55センチの五角形の和紙に染料で描かれている。題名は「釜淵双級巴(かまがふちふたつどもえ)」で、江戸中期以降に人形浄瑠璃や歌舞伎で上演された演目を題材にしている。

 五右衛門とその家族の物語で、生き別れた父や妻、子どもが登場し、その悲哀が描かれる。出生や盗賊団での悪事、捕縛され市中引き回しになる様子などを24枚に収める。

 処刑の場面では、五右衛門が息子をかばいながら釜ゆでになり、元妻が錯乱して乱入する様子が描かれる。処刑後の最後の一枚は、役人が死体を処理する場面を淡々と描いており、脚本にはない絵金の創作とみられる。

 横田学芸員は「盗賊の悲哀に満ちた人間ドラマを描く半面、世の無常や人々の滑稽な表情を描き込んでいるのは絵金らしい。保存状態も良く、当時の夏祭りの雰囲気を感じながら鑑賞してほしい」と話している。

 絵馬提灯はアクトランド企画展「宵を彩る 絵馬提灯の世界」で、10月11日まで公開されている。(楠瀬慶太)

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