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2021.07.01 08:00

【中国共産党100年】国際秩序を重視せよ

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 中国共産党が創建されて、きょうで100年を迎えた。一党支配の強力なリーダーシップによって、米国に次ぐ経済大国となる目覚ましい発展を成し遂げたのは事実だ。
 現在は習近平国家主席の1強体制で軍事力を増強し、内外に強硬姿勢が目立っている。
 世界から信頼される大国となるには、海洋進出などの行動を自制する必要がある。他国の脅威となるのではなく、国際秩序を重視すべきだ。
 中国共産党は1921年、毛沢東らが上海で創建した。日中戦争拡大後の国民党との抗日民族統一戦線を経て、49年、同党との内戦に勝利し中華人民共和国が成立した。
 多くの餓死者が出た「大躍進」運動、社会を荒廃させた「文化大革命」など、建国後は苦難の連続だった。経済発展への道を開いたのは、78年の改革・開放政策への転換だ。市場経済を導入する半面、若者らの民主化要求は許さず、89年の「天安門事件」を武力で弾圧した。
 非難が高まったが、党は国民の生活水準を向上させることで弾圧を正当化してきた。
 豊富な労働力や低賃金で「世界の工場」と呼ばれ、輸出型の加工貿易で発展。2010年には国内総生産で日本を抜いて世界2位となった。都市部では国民が欧米並みの生活を享受するようにもなっている。
 しかし、こうしたやり方は限界に近づいているのではないか。
 頼みの綱である経済成長は鈍化が避けられなくなってきた。富裕層と貧困層、都市と地方の格差は縮まらない。長年の過剰投資によって、地方政府や企業の債務も膨大になっている。今後は少子高齢化が加速し、年金や医療、福祉の財源不足が指摘されている。中国も「老大国」への道を進まざるを得ない。
 国民の不満を封じるために習指導部が行っているのは、相も変わらず「愛国主義」を浸透させ言論統制など力で抑え付けることだ。
 香港の「一国二制度」を骨抜きにしたことは世界に衝撃を与えた。統一を目指す台湾にも、軍事力を誇示し圧力を強める。新疆ウイグル自治区での少数民族弾圧は、米国から「ジェノサイド(民族大量虐殺)」と批判されている。
 中国は「内政干渉」と反発するが、人間の自由や権利を抑圧することはどんな国であっても許されることではない。
 党は100周年記念行事で、習氏を建国の父、毛沢東と並ぶ別格の存在に位置付けた。習氏は国家主席の任期制限を撤廃しており、専制主義の長期化も懸念される。一方で中国包囲網への危機感からか、変化も見られる。5月、党幹部の学習会で「愛される中国」のイメージづくりを指示した。だが、表面だけ取り繕っても反中感情は改善しない。
 国際社会の懸念に向き合い、説明責任を果たさなければならない。他国を脅かし、国民を抑圧するような政策は改めるべきである。それなしに信頼され、愛される大国にはなれない。

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