2021.06.29 08:00

【五輪水際対策】事前にリスク最小化を

 東京五輪・パラリンピックの感染対策に改めて不安を感じた人もいたろう。事前合宿で来日したウガンダ選手団で2人の新型コロナウイルス感染が判明し、濃厚接触者の判定や扱いで混乱した。
 大会は、選手らと外部の接触を断つ「バブル方式」を採用し、大会組織委員会や政府は「安全安心」を強調してきたが、最初の水際で感染者の入国を防げなかった事実は重い。選手団の入国ラッシュはこれからだ。事態をしっかり検証し、早急に対策を練り直す必要がある。
 ウガンダ選手団9人は英アストラゼネカ製のワクチンを2回接種し、出国前の検査で陰性証明を得た上で成田空港に到着した。
 直後の空港検疫でうち1人が陽性となり隔離。濃厚接触者の判定がなされないうちに、陰性だった8人が貸し切りバスで合宿地の大阪府泉佐野市へと移動した。
 受け入れ先の保健所で選手団が濃厚接触者と判定されたのは3日後。市職員のほかバスの運転手、添乗員も追加認定された。うち選手団1人の感染が分かった。
 濃厚接触者の判定は受け入れ自治体側で行うルールというが、それが適切だったかどうかは疑問が残る。
 丸川珠代五輪相は、選手団が専用バスで移動したことを指摘して「管理された状況の中で待機場所に行っている」と強調。問題はなかったとの認識を示した。果たしてそうだろうか。
 空港での検疫直後に濃厚接触者を特定していれば、市職員やバス運転手らの接触は避けられた可能性もあろう。到着後の宿泊先にもスタッフがいる。2人が感染したとみられるインド由来のデルタ株は感染力が強く、対応の遅れがより重大な事態につながった恐れも否めない。
 今回、保健所の担当者は「陽性者自身は大阪におらず、聞き取りすらできなかった」と困惑していたという。サッカーの国際親善試合の際にも、どの組織が濃厚接触者を判定するかで混乱した事例があったばかりだ。
 国と自治体で役割分担は必要にしても、空港で判定するなど支援の在り方を見直すべきではないか。
 検査態勢をすり抜けた選手団の感染を「想定外」と受け止める大会関係者も多いという。だが「バブル方式」はその例え通り、泡のようにもろく完全な防壁ではあり得ないだろう。
 前提の一つとなるワクチン接種は感染そのものを完全に防ぐ効果はなく、検査も確度は100%ではない。同じバブル方式を導入して開かれているサッカーの南米選手権では多くの感染者が出ている。全てのリスクを想定することは不可能だとしても、アクシデントに柔軟に対応することが求められる。
 それだけに東京五輪・パラリンピックを開催するのであれば、事前に感染拡大のリスクを最小限に抑えておくことが重要だ。専門家の科学的知見を尊重し、あらゆる手段を講じる必要がある。

カテゴリー: 社説

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