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2021.06.28 08:00

【携帯高額誘導】消費者軽視は許されない

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 公正取引委員会はNTTドコモ、KDDI(au)、ソフトバンクの携帯大手3社に、販売代理店との取引改善を求める行政指導を行った。
 大手が導入している営業成績の評価制度によって、代理店では客の利用実態に合わない高額プランへの勧誘が横行している。
 特に代理店での契約が多い高齢者らが不利益を被っている。大手が代理店を支配する構造を見直し、消費者を軽視した不適切な営業をなくしていく必要がある。
 代理店は「ドコモショップ」や「auショップ」など全国に約8千拠点ある。大手が卸した携帯端末を販売し、経営は大手から受け取る手数料収入に依存している。
 問題視された評価制度では、高額な大容量プランの契約数が多いほど高く評価される。その達成が手数料の増減に直結している。
 代理店関係者によれば、大手とは「奴隷のよう」な関係で、営業ノルマを達成できなければ経営が立ちゆかないほど手数料を減額される。代理店契約の解除もあり得る。
 総務省のアンケートでは、客の意向を確認せずに、より高額な料金プランに勧誘したことがある代理店従業員は4割超に上った。勧誘の要因として、多くの従業員が営業ノルマの圧力を挙げている。
 行政指導を受けて、評価制度の見直しに動きだした会社もある。
 公取委は今回、大手による一方的な手数料体系の変更や、端末の販売価格の拘束も独禁法上、問題になり得ると指摘した。大手が代理店を支配する構造にメスを入れた格好だ。
 問題の背景として、大手3社で契約数の8割を超える寡占状態が挙げられる。携帯業界の健全な競争が阻害され、代理店に対しても圧倒的に優位な立場が続いてきた。
 携帯料金の長年にわたる高止まりも招いてきたとされる。これに対し、菅義偉首相は看板政策として、大手に大幅な料金引き下げを要請。各社はオンライン手続きに特化した低料金プランを打ち出した。
 ただ、インターネットに不慣れな高齢者らは代理店での対面契約が中心だ。値下げの恩恵は一部にとどまる。その上、知識不足につけ込まれる形で高額プランに誘導されているとなれば、見過ごせない「デジタル弱者」の問題と言えよう。
 60代以上のネット利用率は大きく伸びている。総務省の調査によれば、60代で9割、70代で7割、80代でも6割近くが利用している。
 スマートフォンでネットを利用している割合も伸び、本県でも5割を超えている。ネットが担う行政サービスも拡大している。
 高齢者らがスマホの扱いに困ったとき、地域の代理店は「駆け込み寺」的な存在でもある。果たしている役割は大きい。最適なプランを紹介する本来の機能回復に向けて、適正な営業が強く求められる。
 大手3社は改善に取り組まなければならない。寡占にあぐらをかくような振る舞いはやめ、消費者や取引先を重視する姿勢に転換すべきだ。

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