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2021.06.27 08:00

【河井氏実刑判決】国民はまだ納得してない

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 2019年7月の参院選広島選挙区を巡る買収事件で、公選法違反(買収、事前運動)の罪に問われた元法相の河井克行被告=衆院議員辞職=に、東京地裁は懲役3年、追徴金130万円の判決を言い渡した。
 妻の案里氏=有罪確定=の当選を目的に、地元議員ら100人に計約2870万円を配ったと認定した。法相経験者への実刑判決は極めて異例の事態である。
 克行被告は控訴したが、大規模買収という民主主義の根幹を揺るがす事件は司法の場では一つの節目を迎えた。しかし、河井夫妻も選挙資金1億5千万円を提供した自民党本部もまだ当事者としての責任を果たしていない。説明を欠いたままでは有権者は到底納得できない。
 判決によると、19年3~8月に100人を買収。克行被告が事件全体を差配し、現金のほとんどを自ら配ったという。自民党県連が現職のみを支援する厳しい選挙情勢の中、買収相手が集票を見込める立場だったことなどを指摘し「現金授受はいずれも選挙買収だった」と判断した。
 買収相手は広島県の全域にわたり、金額も多い。なりふり構わないばらまきを、当初克行氏が主張した政治活動とするには無理があろう。「票を金で買う」行為は、判決が断じた通り「選挙の公正を著しく害する極めて悪質な犯行」と言わざるを得ない。
 事件に関する国民の疑問はまだ残っている。東京地裁判決は入金の経緯や買収の原資については触れなかった。自民党本部が提供した1億5千万円のうち1億2千万円は政党交付金である。税金を含む資金が買収に使われたのではないかという疑念は、このまま曖昧にしていい問題ではない。
 自民党本部は資金提供の当事者である。幹部同士でその責任を押しつけ合った末、やっと総裁と幹事長の責任を認めたが、菅義偉首相(党総裁)は当時の安倍晋三総裁に説明を求めるか言及を避けている。検察に押収された資料が返還され次第、報告書を作成するとしている。責任ある説明を求めたい。
 自民党では、菅原一秀前経済産業相=衆院議員辞職=も地元有権者に香典や枕花など計約80万円分を配ったとして公選法違反罪で略式起訴され、公民権停止3年、罰金40万円の略式命令を受けた。
 鶏卵汚職事件の吉川貴盛元農相を含めると、この1年間で実に3人もの閣僚経験者が政治とカネで立件されたことになる。さらに「桜を見る会」前日の夕食会費用の補塡(ほてん)問題もくすぶったままだ。
 不祥事が発覚するたび、自民党は「本人がしっかり説明責任を果たすべきだ」としてきたが、実際には真相を曖昧にしたままやり過ごすパターンを繰り返してきた。
 道義的、政治的な責任をおざなりにしてきた結果、自浄作用が働かなくなり、政治とカネを引きずっているのではないか。当事者個人はもちろん、組織としての体質が問われている。

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