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2021.06.23 08:00

【イラン大統領選】核合意再建へ交渉急げ

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 中東の地域大国イランの大統領選で、反米保守強硬派のイブラヒム・ライシ師が圧勝した。新政権は8月に発足する。
 イラン核合意の再建に向け、米国とイランは4月から、欧州連合(EU)などを介して間接協議を断続的に行っているが、保守強硬派の政権返り咲きで協議の行方は不透明さを増した。国際社会との緊張感が再び高まる恐れがある。
 イランの大統領は、国政全般の最終決定権を持つ最高指導者の下で行政権をつかさどる。米欧との対話を重視する穏健派ロウハニ大統領の任期満了に伴う大統領選は、予想通りの結果となった。
 最高指導者ハメネイ師の後継候補の一人とされるライシ師の当選を確実にするためか、当局の事前審査で有力候補が次々と排除された。過去最低の投票率、次点が「白票」という異例の選挙は、当選者の正統性に疑問符が付いた格好だ。
 国民の不満は、選択肢を奪われたことだけが理由ではない。ライシ師は1988年に政治犯約5千人を超法規的に処刑した「死の委員会」の構成員だった疑いがあり、2009年の民主化デモ「緑の運動」を弾圧した一人とも言われる。
 イスラム教の保守的な解釈に基づく厳格な統治や、革命体制の維持へ一層抑圧的な政策を取る恐れがある。国民に不安や失望が広がるのも当然だろう。
 国際社会の懸念も大きい。核開発を大幅に制限する核合意の再建を目指す動きに、政権交代が冷や水を浴びせかねないからだ。交渉がより困難な反米保守強硬派の台頭には、間接協議の相手である米国の責任も否めない。
 米とイランなどは15年、核開発抑制の見返りとして、米欧の制裁を解除する核合意を結んだ。
 ところが、トランプ政権が18年、一方的に破棄した上、強力な制裁を発動した。イランは原油の輸出による財源を失い、国際的な金融市場から締め出された。国民は経済の低迷に苦しみ、国際協調を重んじたロウハニ大統領はハメネイ師と支持層の信頼を一度に失った。
 ホルムズ海峡周辺でのタンカー攻撃や親米国サウジアラビアの石油施設攻撃、核兵器級に近い水準へのウラン濃縮といった事態が起こるたびに中東の緊張感は高まる。それらは反米の牙城である「革命防衛隊」をはじめとする保守強硬派の挑発にほかならない。
 米国、イランともに間接協議を継続する方針で、関係国の会合も開かれた。ただし、制裁解除の範囲や核開発制限の段取りでなお隔たりがあり、交渉は難航している。特に防衛隊関連の制裁解除は容易ではない。米国は防衛隊をテロ組織とみて封じ込めを図る一方、ライシ師には強力な支持組織だ。
 新政権の発足後は妥協点を見いだすのがより難しくなろう。交渉を急ぐ必要がある。イランとも友好的な関係を保つ日本も積極的に関与し、中東の安定化に貢献したい。

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