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2021.06.20 08:00

【イスラエル】新政権は和平へかじ切れ

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 イスラエルの国会は8党による新連立政権を承認した。12年連続、通算で15年に及んだネタニヤフ政権は退陣に追い込まれた。
 対パレスチナ強硬派のネタニヤフ氏の下で中東和平交渉は暗礁に乗り上げ、5月にはガザ地区への空爆で大勢の市民らが犠牲になった。
 反ネタニヤフ首相の一点で結集した新政権は基盤の弱さが懸念されるが、政権交代の節目を和平実現への転機としなければならない。
 2019年4月以降、4回目となる3月の総選挙でネタニヤフ氏率いる右派与党リクードは第1党を維持した。だが、政治的混乱は続いた。ネタニヤフ氏の汚職疑惑などで連立協議が整わなかったからだ。
 新型コロナウイルスワクチンの接種を早い段階から進めるなど指導力を発揮した半面、国内少数派のアラブ人や左派勢力を敵視し、分断をあおる場面も多くみられた。
 そうした政治手法を象徴するのが5月のガザ空爆だろう。地区を実効支配するイスラム組織ハマスからのロケット弾攻撃に対し、11日間にわたって人口密集地に大規模な空爆を加えた。
 自衛のためとしたが、子どもを含む250人以上の犠牲を伴う必要があったのか。政治的な窮地に立っていたネタニヤフ氏が自らの対外的な強さをアピールするため、事態を利用したとの見方もある。
 強硬姿勢で一時的に求心力を回復したが、停戦後に国民の支持は急落した。空爆を機にユダヤ人とアラブ人の衝突が多発したことで、不安が広がったのは間違いない。
 ネタニヤフ氏も連立に加わる8党の切り崩しに躍起だったようだが、深まった亀裂の修復を求めた民意が退陣を後押ししたといえよう。
 新政権では、右派政党のベネット氏が新首相に就任し、2年後に中道政党のラピド氏に交代するという。各党は政策的にも右派から左派まで違いが大きく、政権運営が不安定になる恐れは否めない。
 和平に関する方針もまちまちだろう。ベネット新首相は、前政権のパレスチナやイランへの強硬策を継続する意思を示し、再びガザ地区を空爆した。だが、強硬策の限界が政権交代につながったのではないか。イスラエルは国内の分断だけではなく、国際社会とも溝を深めている。
 イラン核合意の再建に向けて協調路線を掲げた米バイデン政権をにらみ、中東の地域大国は対話路線に軸足を移し、5月の空爆でもパレスチナ支持で足並みをそろえた。
 最大の後ろ盾である米国もイスラエルの自衛権は認めつつ、強く自制を求めて両国間はぎくしゃくした。強硬策一辺倒では国際的な孤立を深めかねない。
 新政権は国際法違反と指摘される占領地ヨルダン川西岸への入植活動を見直すなど、和平協議に向けた環境整備にかじを切るべきだ。「寄り合い所帯」の新政権だが、初めてイスラム政党も加わった多様性はむしろ強みになり得よう。国際社会が政策の転換を期待している。

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