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2021.06.18 08:00

【緊急事態解除】楽観を排除した対応を

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 10都道府県に発令中の新型コロナウイルス緊急事態宣言は、沖縄を除く9都道府県は20日の期限で解除される。岡山、広島を除く7都道府県は7月11日までのまん延防止等重点措置に移行し、首都圏3県の重点措置は延長する。
 前回の宣言は1月に首都圏4都県に発令され、最大11都府県に拡大した。3月下旬にはすべて解除されたが、都市部では新規感染者数が増加傾向を示しており、変異株への警戒感も強い中での解除判断だった。
 4月初旬には重点措置が大阪などに初適用され、続いて東京などが追加された。月内にこの一部が宣言へと切り替わり、対象の追加や延長をしてきた。
 今回の宣言解除も楽観はできない。感染者の減少の一方で下げ止まりも見られる。大阪府幹部は「第4波」に入る春先の状況に似ていると危機感を強めている。
 宣言解除に関して国立感染症研究所の脇田隆字所長は、リバウンドの予兆があれば直ちに宣言を出すのが専門家の意見だと述べている。菅義偉首相も機動的に発動する意向を示してはいる。経済重視の対応が批判された局面もあった。消極姿勢にとどまってはならない。
 5月に岡山、広島などが宣言地域に加わった際には、政府は当初、この2県は重点措置とすることを諮問していた。基本的対処方針分科会で専門家から異議が上がり、急きょ方針転換した経緯がある。
 柔軟な対応という評価もできはするが、その前段での自治体との意思疎通の不十分さや状況判断の甘さが浮かび上がる。恣意(しい)的な政治判断とも取られかねない。政府の唐突な変更に振り回されていては政策への信頼は高まらず、国民の行動制限への協力も遠のく。
 感染拡大を巡る議論では、東京五輪・パラリンピックでの対応が避けられない。政府が観客ありにこだわっていることは明らかだ。
 大規模イベントの人数は、宣言と重点措置の解除後1カ月程度の経過措置として、定員の50%以内であれば1万人を上限とすることになった。五輪などの観客数の基準とする方向で検討されるようだ。
 だが、政府の感染症対策分科会の尾身茂会長は、この観客上限は五輪の観客の議論とは関係ない基準だと説明している。五輪の特殊性は、ほかのイベントとは同一に論じられないということだろう。
 国立感染症研究所などは、観客が入ると無観客と比べて感染拡大につながり、場合によっては五輪期間中に宣言の再発令が必要となる可能性があると試算する。観客上限は月内に正式決定するという。再拡大を起こさないためにどういう対応をとるのか、科学的な知見に基づく政府の判断を示すことが欠かせない。
 衆院選を控え、菅内閣は五輪とワクチン接種の進展を支持率向上につなげたいともくろんでいるだろう。目指す「安全安心」な大会を実現するには、十分な説明と国民の理解が前提となる。

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