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2021.06.12 08:00

【世界遺産登録へ】地域振興と保全の両立を

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 北海道と東北北部に残る17の縄文時代の遺跡群が、国連教育科学文化機関(ユネスコ)の世界文化遺産に登録されることになった。
 「奄美大島、徳之島、沖縄島北部および西表島」(鹿児島県、沖縄県)も、ユネスコの世界自然遺産への登録が確実になっている。
 日本固有の文化と自然の価値が認められた。いずれもロマンを感じさせる「宝」だ。魅力を知り、後世に伝える保全に力を入れたい。
 7月に開かれる世界遺産委員会で正式に決まる見通しになっている。国内の世界文化遺産は20件、世界自然遺産は5件に増える。
 日本では、縄文時代が約1万5千年前に始まり、1万年以上も続いた。獲物を追いかけ移動生活を送る縄文文化から、米を栽培し定住する弥生文化に置き換わった―。こうした従来の見方は研究が進んで否定されている。
 縄文時代は気候が温暖になり食料資源が増えたことを背景にして、早期から狩猟や漁猟、採集を基盤にした定住生活が確立されたという。
 研究者は、農耕以前の定住開始は世界的にユニークで「世界に誇るべき特別な文化」と指摘する。
 17の遺跡群は年代が異なり、集落が発展する過程を物語る構成だ。住居や墓が現れ、建物や道が計画的に配置された三内丸山遺跡(青森県)のような大規模集落も生まれる。
 「秋田のストーンサークル」と呼ばれる大湯環状列石(秋田県)などは祭祀(さいし)場で、複雑な精神文化があったことを示す。
 審査したユネスコの諮問機関は、登録の勧告で17遺跡のいずれも除外しなかった。「満点合格」になったことも評価したい。
 一方、世界自然遺産になる「沖縄・奄美」は、亜熱帯の常緑森林に貴重な動植物が生息している。勧告では「生物多様性の保全上、重要な地域」と評価された。
 4島にまたがる区域は計約4万3千ヘクタール。アマミノクロウサギやイリオモテヤマネコ、ヤンバルクイナなど数多くの固有種を誇っている。
 世界遺産への登録はゴールではなく、保護のスタートとも言われる。勧告では、日本政府に対して条件も付けている。縄文遺跡群には「不適切な構造物」の撤去などを要請した。遺跡を横切る道路や景観を損なう送電線があるためとみられる。
 「沖縄・奄美」には、希少動物が交通事故に遭わないようにする対策や、西表島に関しては観光客数の上限を設けることなどを求めている。
 実施状況は、ユネスコ側に報告しなければならない。政府や自治体には保全体制の強化が求められる。開発や観光を一定規制し、環境の負荷を最小限にする対策が欠かせない。
 一方で、地元では地域活性化も期待されていよう。一般の人が現地に足を運び、その価値を見て体感することは、保全活動を幅広く展開していく上でも重要である。
 いかに魅力を知ってもらいながら守っていくか。バランスのとれた「両立」に知恵を絞る必要がある。

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