2021.06.11 08:00

【認知症新薬】根本治療へ研究加速を

 国内製薬大手のエーザイと米バイオ医薬品大手バイオジェンが共同開発したアルツハイマー病の新薬「アデュカヌマブ」が米食品医薬品局(FDA)に承認された。
 国内では昨年12月に承認を申請しており、年内にも可否が判断される可能性があるという。
 病気が進むメカニズムに直接作用する初めての薬となる。効果の確認や治療費の面で課題はあるものの、治療の選択肢が増えるメリットは小さくない。根本治療の第一歩につながれば患者や家族にとって大きな希望となろう。
 認知症の原因は脳血管障害などさまざまあるが、厚生労働省によるとアルツハイマー病が6割以上を占める。脳内にアミロイドベータという有害なタンパク質が蓄積し、神経細胞を壊して認知機能が低下すると考えられている。
 従来の薬はいずれも神経細胞を活性化するもので、一時的に不安感やイライラなどの症状を和らげるが、認知症の進行自体を止めることはできなかった。
 症状が進み生活に支障が出たり、家族が分からなくなったりすると患者自身の尊厳にも関わってくる。介護する周囲の負担も極めて大きく、新薬や根本治療を求める声には切実なものがある。アデュカヌマブは米国では18年ぶりとなる承認で、当然期待も高まろう。
 新薬は原因物質とされるアミロイドベータを人工の抗体で排除し、蓄積量を減らす仕組みだ。すでに壊れた神経細胞の修復は難しいため、軽度認知障害や軽度の認知症など早期の患者が対象となる。
 開発企業側は、3種類の臨床試験で脳内のアミロイドベータが59~71%減少し、記憶や言語機能が衰える速さを約22%抑制する効果がみられたとする。
 ただFDAは、アミロイドベータの減少は認めたものの、有効性については「合理的に予測できる」と説明するにとどめた。検証試験の実施を条件に承認されたが、その効果についてはさらなる確認や検証が求められる。
 一般的な治療法として定着するには薬の価格も課題だろう。
 月1回の点滴投与で年間約610万円かかるとの試算があり、治療にはアミロイドベータの蓄積量を調べる高額な事前検査も伴う。多くの患者の治療には保険適用が望ましい一方、医療財政を圧迫する恐れもある。症状や投与する回数など、より効果的な治療を見極めたい。
 国内の認知症患者は2020年に約600万人とされ、団塊の世代全員が75歳以上となる25年には約700万人に達すると推計される。症状の進んだ患者の治療、その生きがいや生活の質をいかに保つかといった課題は山積している。
 近年は、歯周病との関連や人工多能性幹細胞(iPS細胞)を用いた創薬など、多くの研究者によるさまざまなアプローチの知見が積み重ねられている。根本治療に向けた研究の加速が期待される。

カテゴリー: 社説

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