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2021.06.09 08:00

【改正育児法】父親の産休も進めよう

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 改正育児・介護休業法などが成立した。妻の出産時に父親が取得できる「男性版産休」を新設し、企業側には従業員一人一人に育休取得を働き掛けるよう義務付ける。
 少子化は長年、社会問題と認識されてきたが、出産や育児に理解のある社会になったとは言いがたい。カップルが望んだ人数の子どもを産み育てやすい環境づくりを着実に進める必要がある。
 2020年生まれの子どもは84万人余りで、統計開始以来最も少なかった。女性1人が生涯に産む子どもの推定人数、合計特殊出生率は1・34に低下した。高知県は1・48で前年より0・01ポイント上がったが、出生数は4082人で3年連続で過去最少を更新している。
 現状、希望通りに子どもを持てる「希望出生率1・8」という政府目標はほど遠い。新型コロナウイルス感染症の影響を懸念したカップルが多かったにしても、若い世代が結婚や出産、育児に不安を感じていることが背景にあろう。
 改正法に盛り込まれたように、父親も育児休業を取りやすくなれば、そうした現実的な不安の一端が緩和できるかもしれない。
 新設される男性版産休は、子どもが生まれて8週間以内に2回まで、合計4週分取ることができる。来年10月の施行を想定している。これとは別に、従来の育休も夫婦それぞれが2回まで分割して取得できるようになる。
 出産後の女性は身体的ダメージに加え、産後うつの発症リスクも指摘される。男性版産休や育休が環境に合わせてより柔軟に取りやすくなれば、大きな負担軽減につながろう。慣れない育児や家事を補い合えるメリットは小さくない。
 ただ、仕組みは整っても、実際に活用できるかどうかは雇用側の姿勢が鍵を握っている。
 厚生労働省によると、男性の育休取得率が19年度は7・48%にとどまった。25年に30%という政府目標の達成はおぼつかない。代わりの要員を確保できないといった理由から、依然として育休を取りにくい雰囲気が職場に残っているのだろう。
 改正法により、企業側は従業員に育休取得を働き掛けるよう義務化され、違反した場合は労働局が指導、勧告する。悪質なケースは社名も公表できる。
 企業にとっては新たな負担ではある。ただ、子育てしやすい会社を実現することは大きなアピールポイントにもなろう。率先して職場の雰囲気を醸成してほしい。
 与野党ともに、子ども関連施策の司令塔となる省庁の構想を提案している。育休のほかにも、子育てしやすい環境の実現にはまだ課題が多い。「組織ありき」ではなく、施策全体で実効性を高める議論を期待したい。
 出産したばかりのカップルは大きな希望とともに、子どもの将来への責任と不安を抱えている。そうしたカップルを支え見守るのは、社会の責任にほかならない。

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