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2021.06.07 08:00

【大坂選手棄権】心の健康を守る改革を

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 女子テニスの大坂なおみ選手が四大大会の全仏オープンを棄権した。「アスリートの心の健康状態が無視されている」として、試合後の記者会見を拒否していた。
 2018年の全米オープンで四大大会初優勝を果たして以降、うつに悩まされてきたとも告白し、世界に驚きが広がっている。
 競技に強い精神力を発揮するトップアスリートであっても、心の不調と無縁ではないことを知らしめた。一方で、記者会見など報道機関の取材を受けることもプロスポーツの一部とされる。
 選手のメンタルヘルスをどう守るか。アスリート、大会関係者、報道機関、ファンがそれぞれ納得できるような改革が求められる。
 四大大会のルールブックでは、出場選手はけがなどを除いて試合後の記者会見に出席する義務がある。
 大坂選手は1回戦に勝利した後、会見に応じず罰金を科された。主催者側から大会追放の警告も受けた。
 対立の様相となる中、大坂選手は自身のツイッターで2回戦を棄権すると表明し、うつを告白。「自分を守るために会見をやめたほうがいいと考えた」と説明した。
 その上で改めて、会見の義務のルールは「かなり時代遅れ」と批判した。今後、大会運営側と協力して「事態を改善するための方法を話し合いたい」としている。
 大坂選手の会見拒否は、異議申し立てとしては不十分なものだった。全仏オープン前から意向を示していたが、会員制交流サイト(SNS)で一方的に主張しただけで、主催者側との対話には応じなかった。
 一方、うつの告白には共感が広がっている。メンタルヘルスの問題は重要である。強さを競うスポーツ界では、弱い自分を見せることに抵抗を感じやすく、不安や悩みを抱え込みがちとされる。
 大坂選手の告白は「メンタルヘルスの問題の前進に間違いなく大きく寄与する」。そう評した競泳男子のマイケル・フェルプス元選手(米国)は五輪で史上最多、通算23個の金メダルを誇るレジェンドだが、彼も現役時代にうつに悩まされた。
 大坂選手も若くしてスター選手に駆け上がった。さらに昨年の全米オープンでは、黒人差別の犠牲者の名前入りマスクを着け、差別解消を訴える姿が支持を集めた。世界から発言も注目される存在になり、感じていた重圧は計り知れない。
 若いアスリートが「燃え尽き症候群」に陥ることも多いという。メンタルヘルスの不調は、体のけがなどと同列に扱うべきだろう。
 大坂選手の告白を受けて、四大大会の主催者は「選手、ツアー、メディア、そしてテニス界全体と協力して意義のある改善を目指したい」とする声明を発表している。
 今の時代に合ったルールを検討すべきだ。プロスポーツ界全体の改革に広がっていくことを期待したい。
 そして大坂選手がコートに戻り、力強いプレーと愛らしい笑顔を見せてくれることを願っている。

高知のニュース 社説

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