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2021.06.06 08:00

【鶏卵汚職報告】公正性の検証をさらに

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 これで農林水産省の養鶏・鶏卵行政の公正性が保たれていたと結論づけるのは無理がある。
 吉川貴盛元農相らが在宅起訴された汚職事件を受けて検証していた農水省の第三者委員会がまとめた報告は、政策が不当に変更されたケースは確認されなかったとした。
 だが、元農相から職員への働き掛けがあったことは確認している。それにもかかわらず、元農相ら事件当事者に直接話は聞いていないという。今後の公判への影響を考慮したそうだが、それでは説得力に乏しい。農政がゆがめられていないのか、さらなる検証が必要だ。
 元農相は、鶏卵生産大手グループ元代表から計500万円の賄賂を受け取ったとして、収賄罪で在宅起訴された。疑惑浮上後の2020年12月に衆院議員を辞職している。
 鶏卵業界は、家畜を快適な環境で飼育する「アニマルウェルフェア(AW)」の国際基準を日本の実情に応じて緩和することや、鶏卵価格が下がった際に生産者を支援する事業の拡大を要請していた。
 それを実現するための賄賂ではなかったかと疑念が向けられる。行政の信頼性を揺るがしかねないだけに解明は不可欠だ。
 報告書は、AWに絡んで元代表から元農相に要望があり、元農相は当時の担当部局に要望書を渡すなど、指示や働き掛けをした事例が複数回あったと指摘する。
 また、立件を見送られた西川公也元内閣官房参与は、職員への働き掛けが1回確認された。さらに、元代表は1~2カ月に1回、農水省元畜産部長を訪問して2~3時間面会していたとの証言がある。
 こうしたことが判明したとする一方、報告書は政策がゆがめられたと疑われる事実は確認できなかったとする。一連の動きを見れば、その判断をうのみにはしにくい。
 確認した事例には、職員が元代表と日本政策金融公庫の専務との面会を日程調整したことも含まれる。手厚く、また不透明な対応であり、官僚の忖度(そんたく)する姿勢が見て取れる。なぜ優遇したのか、背景を探ることが欠かせない。
 事務次官ら幹部6人は、元農相と元代表らとの会食に同席し、費用を払わずに国家公務員倫理規程に違反したとして処分されている。
 農水省が職員に行った追加調査では、畜産事業者との会食で政治家が全額支払い、同席した職員は自己負担していなかったケースも5件確認された。利害関係者は支払っていないそうだが、規律の緩みや認識の甘さを見る思いだ。
 報告書は、養鶏・鶏卵行政では政官業の距離が近く、行政は政治や業者からの影響を受けやすい構造にあると指摘する。それぞれが自制した対応をとれなければ問題は繰り返されかねない。
 政策決定の過程を改善し、事業実施状況の詳細公表で透明性を向上させることを報告書は訴える。それは重要だが、真相を曖昧にしないことが肝心となる。

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