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2021.06.04 08:00

【ビジネスと人権】欧米に追い付く対応を

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 金融庁と東京証券取引所は今月、上場企業が取るべき行動を定めたコーポレートガバナンス・コード(企業統治原則)を改定し、新たに「人権の尊重」を求める規定を加えた。
 欧米では人権意識が高く、投資家も企業の人権対応を重視するようになっているためだ。
 原材料の調達先や生産拠点で、労働者の人権侵害が行われていないか。地元の自然環境を破壊し、住民の生活に影響を与えていないか。
 それらを確認し情報公開していくことが日本企業に求められている。企業価値を高める上でも「人権の尊重」が欠かせなくなっている。
 新たな規定では、取締役会に対し「収益機会にもつながる重要課題と認識し、企業価値向上の観点から積極的に取り組むよう検討を深めるべきだ」と明記した。
 欧米に比べて日本企業の人権対応は遅れており、経営陣の意識を高める狙いがある。
 経営リスクを避けるためにも対応が必要だ―。日本企業がそう実感する出来事も起きている。
 米国の税関当局はファーストリテイリングの衣料品店「ユニクロ」の男性用シャツの輸入を差し止めた。中国・新疆ウイグル自治区の人権問題に関連した対応だ。
 原料綿の生産について、米国が制裁対象とする「新疆生産建設兵団」が関与した疑いがあるとした。同兵団を巡っては少数民族ウイグル族の強制労働が指摘されている。
 ユニクロ側は中国国外で生産されていると反論したが、当局は「証明が不十分」として退けた。
 米中対立の影響もあるとみられるが、「人権の尊重」は国際的なビジネスの大きな流れになっている。対応を怠れば評価や信頼を損ない、投資先から外される恐れもある。欧米の対応に追い付く必要がある。
 先行する欧州各国では、企業に対応を促す法整備も進んでいる。
 英国は2015年に「現代奴隷法」を制定した。現代奴隷とは、児童労働や強制労働をはじめ、劣悪な環境で労働を強いられ、人権を侵害されている人たちを指す。
 同法では、一定規模以上の企業に対し、強制労働や人身取引などの問題がないかを調べ、報告書の公表を義務付けている。オーストラリアやフランスにも同様の法律がある。
 日本でも企業に対応を促す仕組みを検討するべきだ。疑わしい場合は調べ、問題があれば改善し、情報公開に努める姿勢が求められている。
 消費者にとっても、情報は判断材料になる。原料調達先や生産地での「人権の尊重」がはっきりしない現状では、私たちは知らず知らずのうちに、児童労働などが介在した商品を買っている恐れもある。
 国際基準に見合う人権対応を目指し、国連の「ビジネスと人権に関する指導原則」に基づいた方針を策定する日本企業も増えつつある。
 対応を積極的に進める企業を支持したい。私たち消費者の行動が企業の姿勢を変え、児童労働や強制労働をなくす未来にもつながるはずだ。

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