2021.06.03 08:00

【菅原議員辞職へ】説明なき幕引きはだめだ

 捲土(けんど)重来を期す意向を示しているようで、ならばなおさら説明責任と向き合うべきだろう。政治とカネの問題を巡り、菅原一秀前経済産業相が議員辞職願を提出した。
 東京地検特捜部が公選法違反(寄付行為)の罪で略式起訴に踏み切る観測が強まっている。罰金以上の刑が確定すれば失職する。
 東京都議選が近づき、秋までには衆院選がある。自民党は幕引きを急ぎたいのだろう。うやむやにしては政治不信の解消にはならない。
 特捜部は2020年6月、17~19年に菅原氏の秘書が地元有権者に香典など計30万円相当を提供したと認定した上で不起訴処分(起訴猶予)にした。菅原氏は、公選法違反の認識があったと述べて謝罪する一方、議員辞職は否定した。
 これに対し検察審査会は今年2月、「起訴相当」と議決し、特捜部は再捜査している。新たに、選挙区内の行事の際、祝儀や会費名目で現金を配布した疑惑も浮上した。
 次期衆院選の前哨戦と位置付けられた4月の衆参3選挙直前には、特捜部による菅原氏の任意聴取が判明した。衆院厚生労働委員会の与党筆頭理事に引き上げられていたが、報道を受けて辞任している。
 3選挙で自民党は、不戦敗を含め全敗の結果となった。菅政権初の国政選挙は一連の政治とカネ問題や、新型コロナウイルス対策を巡る政権への逆風にさらされた。
 菅原氏は菅義偉首相の側近の一人だ。19年9月に当時安倍内閣の官房長官だった首相の後押しを得て、経産相として初入閣を果たしている。しかし直後に秘書が地元有権者に香典を渡したなどと報道され、就任から1カ月半で辞任した。
 安倍政権では12年の第2次内閣以降、政治とカネ問題や失言で閣僚辞任が相次いだ。辞任に際しては、当時の安倍晋三首相は任命責任を認めて謝罪もした。しかし、そうした言葉とは裏腹に責任の取り方はあいまいにされてきた。当事者に対して説明責任を求めはしても、真相の究明に取り組んだとは言い難い。当人も捜査中などを理由に説明を拒むのがいつものことになった。
 緊張感を失った長期政権の緩みが政治不信を強めた。菅政権下でも、吉川貴盛元農相の鶏卵汚職事件や河井克行元法相夫妻の巨額買収事件など、政治とカネ問題を巡る不祥事が断ち切れてはいない。政官業の癒着が疑われるような官僚接待も明らかになっている。
 自民党の二階俊博幹事長は、「政治とカネはずいぶんきれいになってきている」との認識のようだ。
 しかし、参院広島選挙区の買収事件で、河井案里氏陣営へ投入した1億5千万円の党資金を巡る党内の混乱などを見ると、そうとは思えない。総裁と幹事長に責任があると収拾を図ったが、買収の原資になったとの疑念は残ったままだ。
 「桜を見る会」前日の夕食会費用の補塡(ほてん)問題もくすぶっている。きれいにするには説明すべき人がしっかり説明することだ。

カテゴリー: 社説

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