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2021.06.02 08:00

【土地規制法案】運用の透明性を明確に

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 自衛隊基地や原発など安全保障上重要な施設周辺の土地利用を規制する法案が衆院を通過した。
 審議の場は参院へ移る。国民監視につながりかねないとの懸念は解消されてはいない。安全保障上の必要性と、国民生活への影響を明確にする必要がある。
 法案は、自衛隊基地などの周囲約1キロや国境離島を「注視区域」に指定する。国は所有者や利用状況を調査できる。施設機能を妨害する行為には中止勧告や命令を出し、従わなければ罰則を科せる。政府は、想定される防衛関連施設の規制対象だけで計500カ所を超えるとする。
 また、司令部機能を持つ自衛隊基地周辺や、領海の基線となる無人国境離島は「特別注視区域」として、一定面積以上の売買に利用目的の事前届け出を義務付ける。違反すれば罰則がある。
 法案提出の背景について、小此木八郎領土問題担当相は「安全保障を巡る環境が不確実性を増している」と説明した。自衛隊施設の周辺の土地を外国資本に買収され、地元で不安の声が上がることがこれまでも指摘されてきた。
 言うまでもなく、安全保障環境が脅かされる事態を招かないことが大切だ。重要施設や国境離島の不適切な利用を防がなければならない。外国資本による土地取引の実態を把握することで混乱を回避しようとする狙いは分かる。
 ところが、外資による土地取得が判明しても、周辺自衛隊の運用にこれまで具体的な支障は生じていないという。そうなると、なぜ立法が必要とされているのかが判然としなくなる。類似の阻害行為を誘発するので必要性を明らかにできないとの政府の説明では説得力は乏しい。
 一方、調査を口実に目的外の情報収集が行われないかや、収集した個人情報がどう扱われるのかなど不安や警戒感は根強い。地価への影響も不安視される。
 また、どのような行為が機能を害することに当たるのかが具体的に示されないと、市民活動への圧力になるとの懸念がぬぐえない。
 法案は、個人情報の保護に十分配慮することや、規制措置は必要最小限とする規定を設けている。
 土地取引に関する情報収集や土地利用者への聴取は、内閣府に新設する組織が担当する。情報収集は土地利用に関するものに限定され、関連しない情報収集は想定せず、情報は一元管理するとしている。
 ただ、規制対象となる重要インフラや調査項目は政令で決めることになる。恣意(しい)的な運用を排除して透明性を確保する必要がある。法案を審議した衆院内閣委員会が採択した付帯決議案は、私権制限への配慮や自治体との事前協議や国会への報告、勧告・命令の公表を盛り込んだ。実効性を確保したい。
 国会の会期末が近づいてきた。与党側は土地規制法案の会期内での成立を目指すようだ。しかし拙速は避けなければならない。慎重な審議を重ねたい。

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