2021.05.30 08:00

【わいせつ教員】教育現場の性暴力なくせ

 教員による児童生徒へのわいせつ行為が問題になる中、教育職員による児童生徒性暴力防止法が参院本会議で可決、成立した。超党派の議員立法として提出されていた。
 わいせつ行為などで懲戒免職となり免許を失効した教員が再交付を申請した際、都道府県教育委員会が拒絶できることを柱にしている。
 同意の有無にかかわらず、教員による児童生徒との性交やわいせつ行為を「児童生徒性暴力」と禁止した。上下関係に乗じた卑劣な行為は許されない。あらゆる教育現場から性暴力を根絶しなければならない。
 文部科学省によれば、2019年度にわいせつ行為やセクハラを理由に懲戒処分や訓告を受けた公立小中高校などの教員は273人に上る。
 18年度の282人に次いで過去2番目に多い。被害者の4割以上が勤務校の児童生徒や卒業生である。
 現行の教育職員免許法では、わいせつ行為で免許を失効しても3年後に再取得できる。処分情報は自治体間で共有されず、別の地域で処分歴を隠して採用され、再びわいせつ行為に及ぶケースがあった。
 同法では、失効した免許の再交付は、都道府県教委が第三者による審査会の意見を踏まえ「適当であると認められる場合」に限るとした。
 わいせつ行為で免許を失効した教員の情報を掲載するデータベースも国が整備する。
 ただ、再交付の制限は憲法が保障する「職業選択の自由」の制限にもつながる。都道府県によって判断に大きな違いが生じないよう公平性への配慮も要る。データベースは情報漏えいや悪用が起きかねない。いずれも運用に慎重を期す必要がある。
 同法は保育士は対象になっていないが、幼児へのわいせつ事件も後を絶たない。再犯率の高さが指摘されており、保育現場の対策も急がなければならない。
 現状では、わいせつ行為で処分される教員は「氷山の一角」とされ、発覚時に「スキンシップ」「恋愛関係」と言い張ることも珍しくない。同法では、刑事罰の対象とならないわいせつ行為も含めて「性暴力」と規定した。加害者の言い逃れを通用させない根拠にもなろう。
 児童生徒は抵抗できなかったり、尊敬や親しみを「恋愛」にすり替えられて混乱したりする。成人後に心的外傷後ストレス障害(PTSD)を発症する場合も少なくない。
 そうした取り返しのつかない被害を防ぐ取り組みを進めるべきだ。
 文科省は4月、会員制交流サイト(SNS)で教え子との私的なやりとりを禁止する通知を都道府県教委に出している。密室での一対一の指導を避けることも明記した。
 子どもに性暴力から身を守る方法を教育する必要もある。水着で隠す部分は人に触らせないと、幼い頃から教えることなどが始まりだろう。
 同法は、疑わしい事案の早期発見や専門家を交えた調査も求めている。被害者の児童生徒を守りながら、関係機関が迅速に対応することが欠かせない。

カテゴリー: 社説

ページトップへ