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2021.05.28 08:00

【50年脱炭素法】基本理念の実現へ堅実に

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 改正地球温暖化対策推進法が成立した。条文に基本理念が設けられ、「2050年までの脱炭素社会の実現」を明記した。
 この方針は既に打ち出しているが、法律によって菅政権の目標にとどまらないことを明確にした。堅実な取り組みで、温暖化ガス排出量の実質ゼロ実現へとつなげたい。
 温暖化防止のための「パリ協定」は、気温上昇を産業革命以前に比べ1・5度以下にする目標を掲げる。その実現には施策の積極的な積み上げが欠かせない。
 国内の二酸化炭素(CO2)排出量の削減には、大規模な省エネルギー化と、排出量全体の4割を占める電力部門の対応が重要となる。発電時にCO2を出さない再生エネルギーの導入加速が求められる。
 改正法は、都道府県や中核市などがつくる温暖化対策の計画に、再生エネの導入目標を盛り込むことを求める。
 また再生エネの導入拡大に向け、自治体が「促進区域」を設ける制度を創設した。事業者は事業計画を自治体に提出し、認められれば必要な許認可手続きが簡素化される。
 温暖化対策が雇用など地域の活性化につながるのは望ましい。ただ、太陽光パネルの設置などで生態系や景観の悪化への懸念から反対運動が起こっている。自治体は環境保全に配慮し、住民らの意見を踏まえて促進区域を設けるが、あいまいな対応をしていては混乱を招きかねない。十分な調整が必要となる。
 当面、政府は太陽光を中心に普及を加速させる方針のようだ。菅義偉首相は、30年度の排出量を13年度比で46%削減する中期目標を掲げた。50年実質ゼロが可能か見定められることになる。19年度実績は14%減にとどまっている。よほど取り組みを加速させなければ実現は難しい。
 洋上風力発電は陸上よりも安定した風が吹くことから、効率的な発電ができるとされるが、本格化は30年以降とみられている。政府が昨年末まとめた「グリーン成長戦略」は、40年の発電能力を最大4500万キロワットとする目標を掲げた。原発45基相当の規模となり、再生エネの柱と位置付ける。
 政府が福島県に設置した風力発電施設は不採算で失敗した。計画の甘さを反省し、教訓を技術開発と効率運用に生かすことだ。
 30年度の新たな電源構成について、経済産業省は再生可能エネは36~38%を軸に検討しているようだ。現行目標の22~24%から大きく引き上げて意欲的だ。
 一方で原子力は2割程度と、現行目標を維持する。19年度実績は6・2%で、原発再稼働に重心が移っている。これでは脱炭素への便乗とみられても仕方ない。
 先の先進7カ国(G7)気候・環境相会合は、石炭火力発電を「世界の気温上昇の唯一最大の原因」と位置付けた。日本の取り組みの遅れに厳しい視線が向けられている。CO2排出削減と再生エネ利用促進へ、多層的に取り組みたい。

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