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2021.05.26 08:00

【選挙資金提供】自民は説明責任果たせ

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 2019年7月の参院選広島選挙区の買収事件を巡り、自民党内で内輪もめが表面化した。
 買収の原資となった疑惑がある1億5千万円の選挙資金を河井案里元参院議員=自民離党=陣営に送金した責任を、党運営を担う幹部同士が押しつけ合った。
 自民党は選挙から2年近くたった今も、国会で資金提供に関する説明責任を果たしていない。ましてや、幹部がそろって責任逃れするさまは政治不信を増幅させただけだろう。公党として、当事者意識を持った対応を改めて求める。
 買収事件で、案里元議員の夫で衆院議員を辞職した克行元法相=同、公選法違反罪で公判中=は、地元議員ら100人に計約2900万円を配ったとされる。
 自民党本部は、県連の反対を押し切って改選2議席に現職と案里元議員を擁立し、案里陣営に現職の10倍に上る選挙資金1億5千万円を提供した。うち1億2千万円は政党交付金だ。税金を含む資金が買収の原資になったかどうかという最大の疑惑はなお残っている。
 買収事件に絡んで、案里元議員は今年2月に有罪が確定し、行政訴訟でも広島高裁から同選挙区での立候補を5年間禁止する判決を受けた。克行元法相の公判も来月18日に判決が言い渡される。
 司法の場では一定の節目を迎えつつあるが、自民党内では混乱を引きずっている。これも説明責任を放置してきたつけといってよい。
 二階俊博幹事長は記者会見で資金提供に「私は関係していない」と言い放ち、同席した林幹雄幹事長代理が「実質的には当時の選対委員長が担当した」と名指しした。これに対し当時選対委員長だった甘利明税制調査会長も記者団に「1ミクロンも関わっていない」と反論した。
 ともに党運営や選挙を取り仕切る最高幹部だ。「知らぬ、存ぜぬ」で通る立場ではあるまい。林幹事長代理は「根掘り葉掘り党の内部のことまで踏み込まないでほしい」と記者を批判したが見識を疑う。
 結局、二階幹事長は「党全体を統括しているのは総裁と幹事長だ。組織上の責任はわれわれにある」と責任を認めた。事態の収拾を図ったに違いない。検察に押収された資料が返還され次第、報告書を作成するとしている。だが、買収事件は自民党内の根深い金権体質を印象づけた。説明を先送りするほど国民の疑念は膨らもう。
 他方、自民と公明の両党は公選法違反で当選無効となった国会議員の歳費返還を可能にする法改正を議論するという。買収事件の発覚後、両元議員が国会に出席していないにもかかわらず歳費を受け取り続けたことへの批判を踏まえた対応とみられる。「政治とカネ」問題のけじめとしたい思惑も透けて見える。
 しかし、買収事件とは明らかに別の話で、問題のすり替えにほかならない。当時の安倍晋三総裁、菅義偉総裁と二階幹事長は早急に国民へ真相を明らかにするべきだ。

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