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2021.05.25 08:00

【石炭火力発電】日本に強まる全廃圧力

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 各国の脱炭素化の取り組みが加速する中、石炭火力発電からの脱却に日本がどう取り組むのか改めて問われる局面となったようだ。
 先進7カ国(G7)気候・環境相会合は共同声明で、二酸化炭素(CO2)の排出を抑制する対策をしていない石炭火力発電への国際投資を「やめなければならない」との判断を打ち出した。
 G7各国は、世界の産業革命前からの気温上昇を1・5度に抑えるための努力を加速させる。2030年代の電力は最大限の脱炭素化を図ることを決定した。
 石炭火力発電を巡っては、既に5カ国が廃止を表明し、米国は廃止を優先事項に位置付ける。
 これに対し、日本は効率が悪い設備は休廃止しつつ、高効率な設備は利用を継続する方針だ。発電量の3割を石炭が占め、立場の違いが鮮明になっている。
 共同声明は、石炭火力発電を「世界の気温上昇の唯一最大の原因」と位置付けた。新たな政府支援の全面的な終了に向けて、年内に具体的な措置を取るとする。
 その一方で、高効率の石炭火力は継続を容認する余地を残した。各国内の石炭火力全廃についても踏み込んだ表現は盛り込まれていない。CO2を多く排出する化石燃料エネルギーに対する政府の新たな国際的な支援を段階的に廃止するものの、各国の裁量で支援を続けることを認める例外措置も付記された。
 日本政府は昨年、石炭火力の輸出支援要件を厳格化した。経済性などの理由で石炭火力を選ばざるを得ない国に限り、高効率の石炭火力の要請があった場合などを条件に輸出を支援するとした。
 こうしたことから、石炭火力に対する強い制限に日本が異議を唱え、脱石炭の取り組みが条件付きになったとする報道がある。
 日本の方針は各国の理解を得られているとの認識を示す政府関係者もいるが、例外措置は取り組みを避ける理由にはならない。孤立を深めたという指摘もあり、石炭火力の輸出を支援する日本に対し、厳しい視線が向けられていることをしっかりと受け止める必要がある。
 政府は、日本企業が海外インフラ案件の受注額を伸ばす戦略を描く。脱炭素化に向けた市場の拡大をにらむが、東南アジアなどでは石炭火力が当面、電力の主力を担うとみられる。このため、日本が輸出を停止しても中国や韓国に市場を奪われるだけだとする見方がある。
 しかし、石炭火力への国際社会からの圧力は高まっている。日本が脱石炭の取り組みを強めることで、各国と連携しながら対応の遅れる国を巻き込むことが求められる。
 11月のCOP26(国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議)で議長国を務める英国は、今回も「全廃」を模索した。6月のG7首脳会議やCOP26ではさらなる進展を求めることは必至だ。日本への圧力も強まってくることが想定されるだけに、脱石炭の道筋を明確にしたい。

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