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2021.05.21 08:00

【リコール不正】民意捏造の全容解明を

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 リコール(解職請求)制度は、住民が地方自治に直接参加する権利を保障する。そんな民意を示す手段が組織ぐるみで悪用されたとなれば、制度の根幹が揺らいでしまう。
 愛知県の大村秀章知事のリコール運動を巡る署名偽造事件で、リコール運動事務局長ら4人が地方自治法違反の疑いで逮捕された。
 現職市長が支援したリコールでの不祥事だ。どのような指揮系統で民意が捏造(ねつぞう)され、誰が関与したのか。再発防止のためにも、徹底した捜査で全容の解明が求められる。
 4人は共謀して昨年10月、佐賀市の貸会議室で、複数のアルバイトに有権者の氏名を署名簿に記載させ、署名を偽造した疑いが持たれている。名古屋市の広告関連会社などがアルバイトを集めた疑いがある。
 リコール運動は、芸術祭「あいちトリエンナーレ2019」の企画展を問題視した美容外科「高須クリニック」の高須克弥院長が主導した。名古屋市の河村たかし市長らも支援した。署名集めは大半の自治体で昨年8~10月に実施された。事務局長の田中孝博容疑者は、広告関連会社に署名集めを依頼したことは認めるが、違法行為は否定している。
 一方の広告関連会社側は、アルバイト集めを約470万円で受注したと周囲に説明している。資金の出どころや目的の解明が不可欠だ。
 集まった署名は、賛否を問う住民投票を実施するのに必要な法定数の約半分にとどまった。県選管は、このうち8割超に不正が疑われると判断して刑事告発していた。
 法定数を下回った場合、通常は選管による署名の審査は行われないが、不正の指摘を受けて調査したという。このため、法定数に届かないことを想定した上で、そこそこの数字を出そうとしたのではないかとの見方もある。不正情報を放置しなかった県選管の対応が制度の悪用に一定の歯止めをかけたことになる。
 田中容疑者は取材に、高須氏に「恥をかかせられなかった」と答えている。高須氏が署名集めは順調に進んでいると発信したことを踏まえたとみられる。
 運動事務局の元幹部は、田中容疑者の指示で署名簿約500枚に指印を押したと証言している。高須氏は、秘書が他人の名前が書かれた署名簿に自身の指印を押していたことを明らかにした。事態を深刻に受け止め、それぞれの立場で解明に取り組む姿勢が求められる。
 一方、提出された署名の8割超が偽造だったという事実は、リコール制度の在り方に重くのしかかる。
 住民が地方行政を監視して、有権者の意思を直接行政に反映させる制度だ。権利行使は無条件に行われるわけではなく、公正であるのは当然だ。チェックの仕組みに不備がないか、改めて確認して再発防止に努めなければならない。
 署名集めルールの厳格化はもちろん、自治体の規模に応じた必要な署名数や収集期間など論点は多い。制度利用を遠ざけないためにも議論を重ねていきたい。

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