2021.05.18 08:00

【入管法改正案】採決強行やめ審議尽くせ

 外国人の収容と送還のルールを見直す入管難民法改正案を巡り、与野党の修正協議が決裂した。
 与党は19日にも衆院法務委員会で政府案通りの採決に踏み切る方向だ。しかし政府案の内容には、国内外から「迫害を逃れて日本に来た難民が強制送還されやすくなる」といった批判が強い。
 野党は、名古屋出入国在留管理局に収容されていたスリランカ人女性が死亡した事案の究明を求め、徹底抗戦する構えを見せている。
 今は国会審議を尽くすべきだ。採決強行は許されない。
 女性は留学生として来日したが、学費を払えなくなり退学した。2020年8月、交際相手のスリランカ人男性のドメスティックバイオレンス(DV)から逃れたいと交番に駆け込み、不法在留が発覚して収容された。帰国しても交際相手に現地で殺されるとおびえていた。
 同年12月、一時的に収容を解く「仮放免」の許可を申請。今年2月に不許可となり、再度の申請中の3月に亡くなった。1月半ばからは繰り返し体調不良を訴えていた。
 DV被害者であるスリランカ人女性のようなケースでは、まずシェルターなどに保護して心身のケアを優先すべきではなかったか。
 医療体制の不備も言われる入管施設では、毎年のように病死や自殺などで死者が出ている。入管当局が送還を促すため収容を続けた結果との指摘もある。日本の人権感覚が疑われかねない状況である。
 現行法では難民申請中の人は強制送還できないため、申請を繰り返すことで送還を忌避する人がいる。政府案は、難民申請による送還停止は2回までに制限することなどが柱になっている。
 とはいえ、申請を繰り返す人にはそれなりの理由もあろう。政治的迫害を受けており帰国すれば命に危険が及ぶ恐れがあったり、日本に長年暮らしてきて家族がいたり。帰れない事情を抱えているケースは少なくない。
 そもそも日本の難民認定率はこの10年間、1%を下回っている。諸外国であれば難民と認定される人たちが認定されていない。
 改正案の修正協議で、野党は「2回制限」の削除など10項目を要求。スリランカ人女性の監視カメラの映像開示も求めたが、与党側に拒まれ折り合いが付かなかった。
 現状では収容するかどうかの判断は入管当局の裁量に任せられており、収容期限の上限もない。当局の権限が必要以上に大きいことが、不透明な収容実態につながってきたとも言えよう。
 政府はこうした課題の見直しには手を付けず、送還徹底を図ることで収容の長期化を解消しようとしている。しかし、それは外国人との共生が求められる時代に逆行する、排除の論理ではないか。
 大切なのは難民認定を求める外国人の人権を重視し、支援する姿勢だろう。日本の入管行政を抜本的に見直す時である。

カテゴリー: 社説

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