2021.05.13 08:00

【デジタル法成立】個人情報保護は怠れない

 遅れている行政手続きのオンライン化などを推進するデジタル改革関連6法が成立した。9月には司令塔となるデジタル庁が発足する。
 デジタル化で利用者の利便が向上するのは望ましい。だが、行政が個人情報を集積し、管理を強めるのではないかと危惧され、課題が残る。
 個人情報が適切に保護されなければ大きな混乱を招いてしまう。情報流出や監視社会化への不安を取り除く対策が求められ、取り組みへの十分な説明と理解が欠かせない。
 関連法には、個人情報保護制度の大幅な見直しが含まれる。
 民間、行政機関、独立行政法人の三つに分かれている個人情報保護法を一本化する。自治体が独自に定めている個人情報保護条例は、全国共通ルールを取り入れる。
 また、自治体に対して国基準に適合した情報システムの利用を義務付ける。政府や地方自治体によるデータの分散管理を改め、デジタル庁が一元管理する。
 こうしたことで情報のやりとりが円滑化され、迅速な行政サービスにつなげるとする。さらに、個人を特定できないよう匿名加工を施して自治体が外部提供するなど、行政データの利活用を促して新ビジネス創出をもくろむ。
 だが、集中管理とすることで情報流出の危険性が増す不安がある。データの利活用に重きが置かれるのではないかという懸念も根強い。
 政府の個人情報保護委員会は、制度の見直しで役割が大きくなる。個人情報利用を監視する対象は、これまでの民間企業だけでなく、国の機関や地方自治体も含むようになる。
 保護委は独立性が高く、企業への立ち入り調査などの権限がある。行政機関を監督することで監視社会化を防ぎ、個人情報を適切に保護できるというのが政府側の考えだ。
 しかし、そもそも盤石の体制が整えられているとは言い難い。不適切な利用に厳しく向き合えるように、人員や権限の拡大を通して組織を強化することが求められる。 
 新型コロナウイルス対応は、日本のデジタル化の遅れをあぶり出した。オンライン手続きの不備に伴う10万円の給付遅れなどを招き、感染者数の集計をファクスで行う実態を知らされた。ワクチン接種予約でも混乱は続いている。
 そうしたことの改善を求める人々の期待も関連法の追い風になった。昨年9月の自民党総裁選でデジタル庁の創設を訴えた菅義偉首相が、突貫工事とも言われるスピードで取り組んできた。
 今国会での成立にこだわったのは、総裁任期の満了や次期衆院選が念頭にあったはずだ。だが急いだ結果、混乱も生んでいる。法案を巡っては、新旧対照表の誤字などが多くあり、その説明資料にも数カ所のミスが見つかった。
 デジタル社会を誰もが安心して暮らせる仕組みづくりが求められる。デジタル機器とのなじみ具合だけでも人によって異なる。丁寧な取り組みが必要だ。

カテゴリー: 社説

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