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2021.05.11 08:00

【避難情報見直し】住民への周知を急げ

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 災害時の情報は迅速な避難につながってこそ意味があると言えよう。見直した発信の仕方が住民に十分認識されるよう、早急かつ広範な周知が求められる。
 改正災害対策基本法案が可決、成立した。市町村が発令する避難勧告が廃止され、避難指示へと一本化される。風水害が懸念される梅雨や台風のシーズンを前に、5月20日から運用を始める。
 政府は2019年5月から、自治体が出す避難勧告・指示に、土砂災害警戒情報などを加えた「大雨・洪水警戒レベル」を、切迫度に応じた5段階で発表している。
 逃げ遅れによる多数の死者を出した18年の西日本豪雨を教訓に、住民に「避難の判断材料」を数字で分かりやすく伝える狙いだ。しかし、詳しい知識がないと判断に困る部分も残った。避難勧告と避難指示が同じ「レベル4」に区分された。
 「勧告」はすぐに避難を始める必要があるものの、スムーズに移動できるよう時間的な余裕を持って発令される。それが十分に認識されず、差し迫った状況で出される「指示」を待って逃げ遅れるケースが後を絶たなかった。
 勧告と指示は1961年から使われてきた。なじみがあった分、生死を分ける1歩目で困惑したかもしれない。このため、改正により避難指示に一本化し、従来の勧告のタイミングで発令する。
 最も切迫した「レベル5」も表現を「災害発生情報」から「緊急安全確保」に変える。災害が発生、または迫った段階で、屋外に出ることが危険な時は少しでも高い場所や、崖と反対側の部屋に移るといった命を守る最善の行動が求められる。
 ただし、災害発生はリアルタイムでの把握が難しく、発令できないケースもあり得る。危険な場所にいる場合は「レベル4」までに安全な場所へ避難するよう心掛けたい。
 高齢者や障害者らの避難については、手助けが必要な人ごとに避難先やルートを決めておく「個別避難計画」の作成を、市町村の努力義務とした。
 西日本豪雨のほか、一昨年の台風19号や昨年の7月豪雨などでも死者・不明者の6~8割を高齢者が占めていた。支援強化は喫緊の課題といってよい。
 これまで法的根拠が弱く、労力もかかるため、地域で取り組みに濃淡があったという。昨年10月時点で対象全員分の個別計画を作成した自治体は9・7%で、一部作成済みは56・9%。高知県はそれぞれ11・8%、82・4%と上回るが、作成を一層加速させたい。
 地球温暖化の影響もあって、近年は全国各地で毎年のように集中豪雨や台風による甚大な被害が発生している。
 避難の判断に必要となる情報発信は絶えず検証を重ね、より分かりやすく見直していかなければならない。私たち住民も災害時にはアンテナを高くし、積極的に行動する意識が求められている。

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