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2021.05.09 08:00

【G7外相会合】協調体制をより強固に

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 先進7カ国(G7)外相会合は、海洋進出など覇権主義的な行動を強める中国を強くけん制し、民主主義陣営の結束を打ち出した。
 バイデン米政権は国際協調路線に回帰し、けん引役復帰への意欲を見せる。トランプ前大統領が自国第一を振りかざしたことでひびが入っていたG7が、再び民主主義の価値観を前面に、連携を図る姿勢に転じたことを印象付ける。
 言うまでもなく、気候変動や新型コロナウイルスなどには、単独で取り組んでも大きな効果は期待できない。協調体制を強固にしながら、地球規模の課題に対応したい。
 国際的な影響力を増す中国情勢が主要な議題となった。共同声明には「台湾海峡の平和と安定の重要性を強調し、(中国と台湾の)両岸問題の平和的解決を促す」と明記した。G7が台湾問題に言及するのは確認できる限り初めてという。
 4月の菅義偉首相とバイデン米大統領の共同声明を踏襲した。日米首脳の共同文書での台湾言及は52年ぶりだった。米側が「唯一の競争相手」と位置付ける中国への警戒感とともに、台湾への連帯をG7で共有したことになる。
 東・南シナ海情勢でも、緊張を高める行動への「強い反対」を表明し、法の支配や民主的価値に基づく「自由で開かれたインド太平洋」の維持を確認した。
 沖縄県・尖閣諸島では、中国海警局船による領海侵入が相次いでいる。G7の結束を抑止力につなげることが必要だ。
 外相声明はまた、中国による新疆ウイグル自治区での人権侵害や香港での民主派排除に危惧を示した。経済を巡っては、中国が専制的かつ威圧的な政策を採っていると批判した。主要経済国としての自覚を求め、ルールに基づく国際秩序への建設的な参画を促した。
 中国は主権に対する干渉と強く反発している。妥協点を見つけることは簡単ではないのが実情だ。
 日本の立ち位置にしても微妙だ。対中圧力を強めると対抗措置を取られかねない。経済関係の悪化などへの懸念は強い。
 米中は各国を巻き込んで対立を深めている。対中制裁に欧米が踏み込む一方、日本は制裁に慎重で、対応には温度差がある。対立に巻き込まれず、また独自路線に理解を得る外交努力が日本に求められる。
 北朝鮮を巡っては、核兵器と弾道ミサイル計画の完全かつ検証可能で不可逆的な廃棄を引き続き目指すとした。外相会合には韓国などがゲストとして参加した。日米韓外相会談が開かれ、米政権は見直した対北朝鮮政策を説明し、3カ国で結束して臨む姿勢を確認した。
 日韓外相も初めて会談し、関係修復の道を探ったが、元慰安婦や元徴用工問題での前進はなかった。地域の安定へ外交当局間の意思疎通を続ける方針という。突破口は見いだしにくいのが実情だが、それだけに、さまざまな機会を生かして日米韓も連携強化を探る必要がある。

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