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2021.05.07 08:00

【国民投票法改正】課題の解決はこれからだ

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 憲法改正手続きを定める国民投票法の改正案が、今国会で成立する見通しとなった。改正案は衆院憲法審査会で修正の上、賛成多数で可決された。
 改正案は、改憲の是非を問う国民投票に関する規定を公選法にそろえる内容で、自民、公明など4党が2018年6月に提出した。駅や商業施設でも投票できる「共通投票所」の導入や、投票所に同伴できる子どもの年齢拡大、期日前投票時間の弾力化など7項目を盛っている。
 国民投票を巡っても利便性が確保されなければならない。同時に、情報と接する公平性も維持しなければ混乱を招くことになる。
 国民投票は国会の発議から60~180日の間に実施される。期日前投票が始まる投票日の14日前から、政党や団体が放送枠を購入するスポットCMで賛成、反対の働き掛けをすることが禁じられる。だが、それまでに資金力が豊富な政党が大量のCMを流せば投票行動に影響を及ぼしかねないと指摘される。
 このため立憲民主党などは、政党CM規制の必要性を訴え、改正案と同時に規制を巡る議論も決着するのが本来の在り方だと主張した。改正案を採決すれば、規制の議論が保障されなくなるとの警戒感もあったようだ。実質審議に入ったのは20年秋の臨時国会で、8国会にわたり継続審議となっていた。
 ただ、立民は投票環境を整える改正案の内容自体には大きな異論はないとの姿勢で、提出から3年近くたって採決に応じないのは説得力に乏しかった。自民と立民は今国会で「何らかの結論を得る」方針で合意していた。
 秋の衆院任期満了を控え、衆院が解散すれば改正案は廃案となる。国会会期末をにらんで各党の思惑が交錯したはずだ。
 立民は、CMのほかインターネット広告、運動資金の規制について「検討を加え、施行後3年をめどに法制上の措置、その他の措置を講じる」ことを改正案の付則に加える内容の修正案を示した。自民が修正を受け入れる方針を示し、立民は憲法審で賛成に回った。ただ、立民は改正案の課題はまだかなり残っているとの認識を示している。
 確かにCM規制の論点は幅広く、その対応はないがしろにできない。現行法が想定していないネット広告は急伸し、多様化している。フェイクニュースの拡散も各国で問題化している。表現の自由も絡む。
 一方、自民は憲法改正項目の具体的な議論を進めたい考えだ。
 衆院憲法審では、国民投票法改正案を審議する際に自由討議を実施し、憲法改正の具体的論点に触れる発言が出ている。憲法の条文論議に巻き込むためとすれば、なし崩しのやり方と言わざるを得ない。
 新型コロナウイルスの感染拡大を背景に、緊急事態対応を改憲に絡める発言も聞かれる。憲法審の前身である憲法調査会は、政局は持ち込まない不文律があったという。落ち着いて議論する環境が必要だ。

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