2021.05.05 08:00

【こどもの日】見えない敵に打ち勝とう

 世界でも有数の人口を誇った幕末期の江戸。肩身を寄せ合うようにして暮らす庶民を麻疹(はしか)や虎狼痢(コロリ)=コレラ=といった伝染病が次々と襲う。現代からタイムスリップした南方仁医師は十分な器具がそろわない状況にも、現代医学の知識と技術を生かして治療に奔走。運命に翻弄(ほんろう)されながらも、多くの命を救っていく―。
 ドラマ化もされた、村上もとかさんの人気漫画「JIN―仁―」のストーリーです。もちろんフィクションですが、時代背景は詳しく調べられています。実際に、伝染病が流行するたびに数万人が犠牲になった上、明治維新に向けた戦争でも多くの若者が命を落としました。
 江戸時代だけではありません。人類の歴史はそのまま伝染病との闘いと言っていいほどです。インフルエンザもそれらしい記録が平安時代にあり、「お七風」「谷風」との別名も。約100年前のスペイン風邪は日本を含め世界で5千万~1億人が亡くなったとされます。
 新型コロナウイルスが猛威を振るう中、2回目の「こどもの日」を迎えました。小中高校生の皆さんは昨年は学校に行けず、楽しみだったたくさんの行事が中止になりました。頑張った部活動の成果をぶつける大会もなくなり、「何で私たちだけ」「ついてない」とやり場のない気持ちになった人も多かったでしょう。
 今年は一斉休校ではないものの、部活動への影響が考えられます。国内での死者は1万人を超え、県内では若い人も重症化しやすい変異株が流行の主体になりました。まずは身を守る行動を心掛けることが大切になります。
 人との距離を気にしたり、マスクの着用や手洗い、うがいを徹底したりする。煩わしい気もします。しかし、これらの対応は、危機を乗り越えた先人が私たちの身を守るために残した贈り物なのです。
 1854年夏にロンドンでコレラが流行した際、ジョン・スノウ医師は死者の発生した位置を分析し、テムズ川から引いた水道の汚染が原因だと突き止めました。こうして始まった「疫学」は、犠牲を伴いながら発展して、JINでは南方医師の大きな武器になりました。
 ステイホームの時間を改めて自らの行動や家庭のルールを科学的、合理的に見直す機会としてはどうでしょう。気付いた点はきっと、ウィズコロナの時代に家族を守ることにつながるはずです。
 そんな視点をさらに世の中に向けてもいい。政治や社会は危機にある時ほど、問題点は見えやすくなります。18歳になれば選挙権を持つ大人です。皆さんの疑問が、家族や友達がより安心して暮らせる社会へのきっかけになるかもしれません。
 トンネルの出口が見えないと、人間はとかく不安を感じるものです。けれども、新型コロナも乗り越えられないピンチではないことを歴史は示しています。現代に生きる私たちは、目に見えない敵に何度も打ち勝った人々の子孫なのですから。

カテゴリー: 社説

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