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2021.05.03 08:00

【憲法記念日】法の支配のゆがみを正せ

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 集団的自衛権の行使を可能とした安全保障関連法は、ことし3月末で施行から5年が過ぎた。
 この5年間に、日本が攻撃を受けていなくても、他国の防衛に当たる集団的自衛権の行使につながる活動はなかった。
 一方、平時から他国軍の艦艇や航空機を自衛隊が守る「武器等防護」や、日本海で北朝鮮の弾道ミサイル防衛に当たる米イージス艦への洋上給油といった複数の新任務が実行に移されている。
 安保法の運用には監視と検証が欠かせない。それ以前の問題として、憲法を改正しないままの法制定は多くの専門家が「違憲」と批判。日本の法の支配や法治主義にゆがみをもたらしたことを忘れてはならない。
 歴代政権は、憲法9条で許される自衛権の範囲を超えているとして集団的自衛権の行使を禁じていた。
 これに対し、安倍前政権は内閣法制局長官を政権の意向に沿う駐フランス大使にすげ替え、閣議決定で長年の憲法解釈を変更した。採決強行を重ねる政治手法への批判も相次いだのは記憶に新しい。
 憲法学者の木村草太・東京都立大学教授は「法の支配を無視しても、強弁や説明拒否で乗り切れる。これがある種の成功体験になり、今に至ってしまっている」と懸念する。
 安倍前政権の憲法軽視の姿勢は問題が多すぎた。2017年、憲法53条に基づき野党が要求した臨時国会の召集を放置したあげく、98日後に開いた臨時会の冒頭に衆院を解散。森友・加計学園を巡る問題を解明する審議を拒絶した。
 那覇地裁は昨年、野党国会議員らが提訴した訴訟の判決で、内閣は召集すべき義務があり、応じなければ違憲と評価される余地はあると53条の趣旨を明確にしている。
 法の支配、立憲主義の軽視は、昨年発足した菅政権にも引き継がれている。
 日本学術会議が推薦した会員候補の任命を菅義偉首相が拒否した問題は、国会論議は下火になっているとはいえ全く解決していない。
 憲法23条の「学問の自由」は個人の権利だけでなく、専門家集団の自律性も保障していると解釈される。そうした考えから大学の自治も認められてきたとされている。
 会員候補の6人は安全保障関連法や、沖縄県の米軍普天間飛行場の移設を巡る政府対応などを批判してきた。それを受けた恣意(しい)的な人事であるのならば、学問の自由を脅かす不当な政治介入である。
 今春の新型コロナウイルス特別措置法の改正も懸念が残る。感染抑止の大号令の下、憲法で保障される「移動の自由」や「営業の自由」を制限する内容がすんなり決まることへの警戒感は与野党とも薄かった。
 今国会では、憲法改正手続きに関する国民投票法改正案を採決するかどうかが焦点になっている。ただし、そうした手続き論の前に、民主主義の大前提である法の支配、立憲主義のゆがみを検証し、正していく真摯(しんし)な議論が必要である。

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