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2021.05.01 08:00

【バイデン氏演説】中間層の底上げを確実に

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 バイデン米大統領が就任100日を前に初めて行った施政方針演説は、「米国は再び動きだした」と、この間を総括した。トランプ前政権からの刷新を印象付ける。
 喫緊の課題である新型コロナウイルス対策は、前政権で停滞したワクチン接種が2億回を超えたと成果を誇示した。当初の目標を倍増し、感染者が世界最多ながら接種者数も最多となっている。
 新規感染者数は減っているものの、変異株が増えている。接種回数をさらに増やすために有給休暇取得を認めるよう企業に求め、そのための税控除を行うという。普及への姿勢は明確だ。
 コロナで悪化した景気の早期回復と格差是正を目指して、巨額財政出動を行ってきた。新たにインフラ投資や地球温暖化対策を柱とする「米雇用計画」を打ち出している。「一世代に一度の投資」と位置付け、第2弾と合わせて4兆ドル(約430兆円)規模が想定される。
 数百万人規模の雇用を創出するとの試算があり、期待は大きい。経済成長を通して中間層の底上げを図ることで民主主義を強固にする。同時にトランプ支持派を取り込みたい思惑もうかがえる。
 こうした巨額の財政出動には、「公平な負担」を求めて富裕層や大企業に増税を行うとする。このため野党共和党からは反対意見が出ている。また、景気が過熱してインフレの副作用が出かねないとの懸念が強い。繊細な調整が必要となる。
 唯一の競争相手とする中国には強硬色を鮮明にした。習近平国家主席を「専制主義者」と批判した。
 技術や知的財産の盗用、不正な貿易慣行は米国の労働者と産業を弱体化させるとして、立ち向かう姿勢を示した。また、インド太平洋での強力な軍事的プレゼンス維持を表明し、安全保障や経済など幅広い分野で対抗する決意に言及した。
 折しも、中国では海事局の権限を強化する改正法が成立した。海警局の権限強化に続く措置で、沖縄県・尖閣諸島の周辺海域や南シナ海で緊張を高めかねない。
 一方、気候変動問題を「地球規模の闘い」と位置付けて、各国に協力を求めた。温暖化対策のパリ協定に復帰し、各国・地域の首脳40人を招いたオンラインの気候変動サミットを開催するなど、対応を急ぐ。
 そうした取り組みには中国も巻き込むが、同時に再生可能エネルギー分野の技術で中国に後れをとっていると危機感も強い。風力発電や電気自動車分野など、産業構造の変換をもくろむ。雇用拡大や収入増を図り中産階級の育成につなげる狙いがあり、競争激化は必至だ。
 バイデン政権の100日は、特に対中国でトランプ政権の米国第一主義を引きずりつつ、国際協調路線への復帰を明確にした。核・ミサイル開発を進める北朝鮮対応の政策は見直し中で、イラン核合意への復帰交渉も続く。難題が立ちはだかり、世論も成果を求め、より厳しく判断するようになる。真価が試される。

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